2025年12月6日
静岡西 梅谷拓宣師に聞く
【静岡西】宗派を超えて集まった45歳以下の僧侶が法話を披露し、もう一度会いたいお坊さんの全国ナンバーワンを決める法話の競演「H1法話グランプリ」。
全国80名ほどの宗派を超えたエントリーからファイナリストに8名が選出された中、日蓮宗からは浜松市常住院(杉浦直敬 住職)徒弟、梅谷拓宣師が唯一ファイナリストとなった。大会応募の方法には人それぞれの経緯があったようだが、今回梅谷師に声がかかったのは昨年の大本山本圀寺で開催された日蓮宗布教院に第2回生として参加した縁だったという。昨年12月のグランプリ激戦を終えた梅谷師にあらためて話を聞いた。
12月6日のグランプリ当日、梅谷師がとくに伝えたかったのが「いのちに合掌」だった。
県立高校で教諭として教育に携わった経験もある梅谷師は、篤い信仰心で僧侶への修行の場である信行道場に志願した。35日間の修行は楽ではなかったが、この時にしか経験できない修行がたくさんあった。とくに心に残っているのが、日蓮聖人が晩年を過ごされた身延山御廟所内、御草庵跡での唱題行だった。ここで梅谷師は「いのちに合掌」は自分の命に向きあうことが仏さまと相対峙する尊い時間だ、という事を感じたのだった。
「遠く離れて修行の満了を待っている家族であるとか、自分にとって大事な、亡き人の顔が思い浮かんできた。その空間、時間が尊くて。離れていても、目に見えなくても、自分を支えてくれた人は仏さまとともに一緒に自分のそばにいるんだ。それこそが仏さまなんだ。それが命に合掌なんだ」と。「だからこそお互いに手をあわせあう世の中が大事。そうすることでいのちの尊さが輝き出す。いのちの輝きが出てくる。自分もまた、自分の命のかがやきで誰かを照らすことができる。皆の命が輝けば、この世の中もきっと明るくなっていく。それが『法華経』、お題目に込められた仏さまの願い、いのちに合掌なんだ、とお伝えしたかった。」
いっぽうで法話グランプリは宗派を超えた法話の競演のため、伝え方には普段にはない工夫を迫られた。
「超宗派の聴衆なのでいきなりお題目につなげるのではなく、いろんなところに仏さまがいらっしゃるのですということ。だからこそ手を合わせることが大切ですよ、そこから始めていきましょうということを強くお伝えしました。」
一人あたりに与えられた持ち時間は法話には短いわずか一〇分であったため、原稿作成はゼロからのスタートでこれまでにない苦悩もあったが、経験を生かしてできるかぎり布教院同様に五段法を意識して伝え方と内容を練り上げた。それでも本番で時候のあいさつに「温暖な浜松でも雪が…」と話し出したら時間が足りなくなり、内心はドキドキしながらでもあったという。
とはいえ苦労してこの場に登壇したからこそ感じられた手応えがあった。会場全体が大きく、こちらを向く強いスポットライトの照明で聴衆ひとりひとりの顔はおぼろげにしか見えなかったのだが、自分で書いた「いのち」の字を高く示したときに会場全体が大きく反応したのが伝わってきた。そして、自分が「いのちに合掌」と手をあわせると会場中のひとびとが、一緒に手を合わせる動きがあちこちから見えた。宗派を超えた会場中の人々に、梅谷師の「いのちに合掌」が伝わった瞬間であった。



















