全国の通信記事
2023年11月8日号
東京東部・研修会で多様化する死生観を学ぶ
【東京東】11月8日、東京東部伝道センター主催の教師研修会が江東区の玉泉院(井上慶亮住職)で開催され、管内教師23名が受講した。講師には東北大学の鈴木岩弓名誉教授を招き「宗教民俗学からみた現代日本の死生観」をテーマに話して頂いた。
講演ではまず、日本には昭和頃まで伝統社会の死生観があり、七五三や結婚式、また葬式など、前世代が行っていた生死に関わる儀礼を継承していたと説明がなされた。
次に日本の死生観が変化した要因として、戦後に起こった医療技術の革新と法規制の例を挙げられ、人工妊娠中絶の合法化や体外受精された試験管ベビーの誕生など、子供は「授かるもの」から「作るもの」という考え方が台頭してきたと述べられた。
死についても人工呼吸器の発達や心臓移植手術により、脳の働きが消失しても心臓と呼吸機能は動き続ける「脳死」が生まれ、「心臓死」とどちらを「死」と捉えるか個人の選択に委ねられるようになったという。そしてまた、最新医療により寿命が延び「超高齢多死社会」が到来、命の始まりと終わりは人が操作できるとの理解が普及していったと解説された。
こうした変化を経て現代日本に個人の価値観を重視する死生観が芽生えたという。死者は子孫が祀るという意識は薄れ、「墓じまい」や自ら死の準備をする「終活」という言葉が流行した。また先祖祭祀の方法は多様化し、儀礼を簡略化した「直葬」や、「永代供養墓」「散骨」といった新たな墓制も生まれた。そして今後、80年代以降の日本社会を主導してきた「団塊の世代」が死を迎えるにあたり「自分にとっての死」を模索する傾向は益々顕著となり、より多様な死生観が生まれるとの見解が述べられた。
講演後には、鈴木名誉教授と東京東部伝道センターの川島秀尊センター長による対談も行われ、川島センター長は「寺院や僧侶もより多様な対応が求められるようになるが、どう変化しても、檀信徒の気持ちに寄り添うことを大切にしながら導いていくことが重要だ」と語った。
2023年9月9日号
東京東 夜のお寺で瞑想体験
【東京東】令和5年9月9日夕方、台東区妙音寺で東京東部日青会と全日青伝道委員会が共催する『夜のお寺で瞑想体験』が行われた。
全日青伝道委員会の甲州晶洋委員長は「若い世代が持つスピリチュアルや瞑想への興味をお題目へ繋げたいと考え、若者に馴染みやすい瞑想に唱題行を取り入れた修行体験を企画した」と話す。
同修行体験の開催は3回目、参加者の多くは20代から30代と比較的若く、その大多数を女性が占める。今回も参加者23名中20名が女性だった。
会場となった本堂は、参加者がより集中できるように椅子席とし、雨戸を閉めて真っ暗な堂内の須弥壇に燈明だけを灯した。
瞑想は悩みでも欲望でも、参加者が心に浮かんだ事柄を思い尽くすことから始まる。次に唱題行で心を落ち着かせて、安らいだ心で再び瞑想。自身の思いや考えをポジティブな方向へと進めていく。最後は悩みや苦しみに打ち勝つように、導師が参加者の心願成就を祈願して終了した。
体験後、参加者のアンケートには「ゆっくりできて心が落ち着いた」「向き合ってきたことを考え直すことができた」など、瞑想についての感想の他、「お寺は明るい方へ導いてくれる所という良いイメージを持った」「お坊さんに親近感がわいた」など、お寺に親しみやすさを感じたというコメントも多かった。
また妙音寺ではこの日、写真撮影を通してお寺に親しんでもらうイベント『浴衣Photo寺nic』も合わせて開催され、境内で写真映えするポーズをとって楽しむ人や、浴衣姿で瞑想体験に参加する人も見られた。
2023年7月30日号
東京東 4年ぶりに修養道場
【東京東】令和5年7月30日、江戸川区妙覚寺にて東京東部青年会主催の修養道場が4年ぶりに行われ、堂内に読経する子供たちの元気な声が響き渡った。
修養道場は子供たちがお寺の修行体験を通じて、感謝と思いやりの心を育むことを目的に開く。49回目を迎えた今年は小中学生8名が参加、新型コロナウィルス感染症は5類へと移行したが、4年ぶりの修養道場は慎重を期し、小規模な日帰りでの開催となった。
朝10時、修行は仏前作法から始まり写経と写仏、昼食を挟んでお守り作りと唱題行を体験した。緊張気味だった子供たちも徐々に打ち解け、レクリエーションのスイカ割りや仏具体験では子供たちの笑顔が絶えなかった。また終了式では、子供たち全員が最後までやり遂げようと心を1つにして読経する姿が見られた。
修養道場を終え、子供たちから「楽しかった」「また参加したい」という声を聞いた東京東部青年会の今村隆正会長は「日帰りではあったが、子供たちが心を通わせ成長する姿を見て本当に嬉しかった。来年は以前のように大勢の子供たちが参加する2泊3日の修養道場を実現させたい」と意気込みを新たにした。