2017年4月20日
長野県教化センター「昨今の墓事情」
【長野】長野県教化センターは平成29年4月20日、松本市円乗寺において「昨今の墓事情」と題した講習会が開かれた。
松本市内を中心とした松本石匠組合から3名の講師を招き教師11名、一般3名が参加した。
松本市の管理する9000基を超える霊園の歴史と増加推移をもとに、昭和30年代からの霊園ブームが起きたことや、市内開発に伴う墓地移転工事により整備されていったことなどのお墓の過去と現在を比較しながら、近年増えてきている合同墓や樹木葬を含めた石塔を建てるだけが墓地でないという墓地形態の変化と共に、石屋以外からの業界参入の問題も取り上げられていた。石材に関しても元々お墓は地元から産出した石材を使っていたが、国内産の石材が採れなくなってきたことや費用のあまりかからない海外輸入がほとんどであるということも講習中にあった。
お墓を立てる際に、それまでは一族のお墓だったものが、区画を分けた「お墓の本家・新宅」といった関係も増えているという。それに伴い、大きな墓石よりも小さい墓石の注文が多くなってきているといい、墓所の小型化が進んできているという。また、少子化によって子孫に負担をかけたくないという理由から手間のかからない墓所を求める人が多くなっている傾向だという。
又、石屋には予算的な事や菩提寺との関係を相談する人も多いという。合碑墓ならば予算は安く、自治体の管理する墓地であれば菩提寺との関係も断ちやすいことが浮き彫りになってきており、つかみどころのない若者が増えている中で「墓石離れ・寺離れ・宗教離れ」をどのように止めていくのかと問題提起をした。
その一方で、合同墓などに入りながらもしっかり供養をしてほしいという声もある。中には家族が減ったり離れることにより、県外から移住してきた人が合同墓のある寺院を探すケースもあるという。その際にはきちんと供養してもらえるのかということで金銭面とは違った差が出てくるという見解をあげていた。
これからの時代は、お墓に刻む文字を含め時代と共に変わりつつあるニーズに合わせるだけではなく、若い職人の技術や人柄を含めた人材育成をすると共に、寺院と石屋が密な関係を保っていかねばならないと締めくくった。