鬼面仏心

2024年8月20日号

■8月を平和の月に

昭和20年8月15日。当時5歳の私。その日を今でも覚えている▼照りつける太陽。空襲警報も聞こえずB29も飛ばない異様な静けさのなか、お寺の縁側に置かれたラジオの前に近所の人びとが集まった。やがて終戦を告げる天皇陛下の甲高い声が。父母や集まった人びとも、無言のまま頭を垂れていた。幼い私は異常なほどの空の青さと静けさに敗戦の悲しさより戦争が終わった喜びのようなものを感じた記憶がある▼この戦争で亡くなった日本人は310万人。外国人も加えると2000万人ともいわれる。戦争の悲惨さは戦後に続く。食べるに「食」なく、働くに「職」がない。今では考えられない飢餓と困窮に苦しむ▼戦争は人災だ。理由の如何にかかわらず人類最大の犯罪だ。そんな子どもでも分っていることをなぜ人間は繰り返すのだろう。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ地区攻撃はいうに及ばず、中国と台湾、北朝鮮の動向など一触即発の状況が世界に満ちている▼広島と長崎に落とされた原爆。たった1発で広島は14万人、長崎は7万人が亡くなった。現在の核兵器はその3千倍の威力があるという。その核兵器をロシアは5889発、アメリカ5244発、中国410発、北朝鮮は40発持っているという▼戦争犠牲者の追悼と共に、8月は平和のために自分に何ができるかを考える時にしたい。  (義)

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2024年8月1日号

■推し問答

アイドルなどを熱狂的に支持する活動を示す「推し活」という言葉がある▼法事後、「故人はいつもお寺参りをする熱心な信徒でした」と伝えると、「伯父さんの推しは日蓮さんだったんだ」と女性が話しかけてきた。アイドルの推し活で夢や希望を得て生きてきたという。全国のコンサートを追いかけ、グッズや出演しているCM商品の購入など大金を使ってきた「痛い(熱心な)ファン」だと自認する▼コロナ禍によりライブでアイドルに会えなくなり、また事務所の不祥事が公になった時に発表されたコメントで信じられなくなり、モヤモヤした気持ちが生まれてきた。悩みを聞いてくれて相談できる人が欲しかった▼彼女にとって、信じる対象がアイドルそのものであった。その信が揺らいだ時、この法事があったのだ。「仏さまの推し活をしているお坊さんだったらわかるでしょう、私の気持ち」と話したところで法事の施主の止めが入った▼彼女の推しを否定はしないが、伝えたいことがある。仏推しの要は、ただ衆生(人びと)と共にあるのだと。1人だけの幸せを求めるから救われない。彼女は「自分1人きりの推し」に揺らされている。他者と共に生きることが、自分を生かす道だと仏は説く。「あなたの伯父さんは嬉しい時も悲しい時も、自分の人生はそこにしかないと仏を推して手を合わせていましたよ」。 (雅)

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