2024年8月1日
■推し問答
アイドルなどを熱狂的に支持する活動を示す「推し活」という言葉がある▼法事後、「故人はいつもお寺参りをする熱心な信徒でした」と伝えると、「伯父さんの推しは日蓮さんだったんだ」と女性が話しかけてきた。アイドルの推し活で夢や希望を得て生きてきたという。全国のコンサートを追いかけ、グッズや出演しているCM商品の購入など大金を使ってきた「痛い(熱心な)ファン」だと自認する▼コロナ禍によりライブでアイドルに会えなくなり、また事務所の不祥事が公になった時に発表されたコメントで信じられなくなり、モヤモヤした気持ちが生まれてきた。悩みを聞いてくれて相談できる人が欲しかった▼彼女にとって、信じる対象がアイドルそのものであった。その信が揺らいだ時、この法事があったのだ。「仏さまの推し活をしているお坊さんだったらわかるでしょう、私の気持ち」と話したところで法事の施主の止めが入った▼彼女の推しを否定はしないが、伝えたいことがある。仏推しの要は、ただ衆生(人びと)と共にあるのだと。1人だけの幸せを求めるから救われない。彼女は「自分1人きりの推し」に揺らされている。他者と共に生きることが、自分を生かす道だと仏は説く。「あなたの伯父さんは嬉しい時も悲しい時も、自分の人生はそこにしかないと仏を推して手を合わせていましたよ」。 (雅)