鬼面仏心
2024年1月20日号
■今は祈るしか
能登半島地震において犠牲になられた人たちのご冥福とご遺族にお悔やみ申し上げます。また被災された人たちが元の生活と心の平安を1日でも早く取り戻せることを祈念いたします▼地震後すぐに被害状況を確認するため能登半島入りを地元の人に相談したが、通行可能道路が発表されたため、支援物資などを運ぶボランティアなどの車が殺到し緊急車両が通れなくなっているから控えてほしいということだった▼小生はともかく、善意や家族を心配する人の気持ちが逆に救助を阻む結果となりうることを知った。やはり責務を担う国や自治体などの専門家に任せるほかない。自衛隊や消防隊、援助隊などの懸命な救助は本当にありがたいと思う▼日蓮宗が掲げる「いのちに合掌」は〝いのち〟の繋がりに感謝をするのが基本だと思うが、日頃から訓練などして、災害への備えを行っている国、自治体、自衛隊や消防隊のみならず病院などを含む組織、そしてそれに関わる多くの人たちへの直接的な感謝も「いのちに合掌」だ。普段の生活においても小生もどれだけそういった人たちに助けられてきたか▼繰り返しになりますが、行方不明者の一刻も早い救助と、重ねて犠牲者のご冥福とご遺族にお悔やみ申し上げ、被災者が元の生活と心の平安を1日も早く取り戻せることを祈念いたします。本当に今はそれだけしかありません。
2024年1月1日号
慈悲のこころをカタチに
東京都東部管内には、「柴又帝釈天」の通称で知られる題経寺があります。映画「男はつらいよ」の舞台となっていることで有名な寺院です。
この「男はつらいよ」で渥美清さんが演じる寅さんの妹役で共演した倍賞千恵子さんが渥美さんから教わったことは、「優しさ、思いやり、厳しさ」だったそうです。
この「優しさ、思いやり」を仏教的に表現しますと「慈悲」なのだと思います。大切なのは、この慈悲を心の振る舞いとして表していくことです。誰かのために慈悲の心を表し、少しでも相手のためになれば、相手の心も自分の心も明るく照らされ〝生きている〟実感が味わえます。
映画の中で寅さんはいいます。
「ああ、生まれてきて良かったなって思うことが何べんかあるじゃない。そのために人間生きてんじゃねえのか」
「慈悲」のこころをカタチに。生きる喜びに。(東京都東部布教師会長・阿部泰雄)
■日と月と蓮華
いくつになっても、新しい年を迎えるのは嬉しい。日蓮聖人は「木に花が咲くように」とその喜びを語られた▼自坊の境内には「日と月と蓮華のごとく」と書かれた石碑が建っている。日蓮聖人第700遠忌の記念に、私が書いて建立したもの。今思うと、見るたびに恥ずかしさで冷や汗が流れる▼日蓮聖人ご降誕800年を慶讃する事業活動がコロナに翻弄されながらも円成。宗門は7年後に迎える第750遠忌を目指し、諸事業活動を検討しているようだ▼思えばあれからもう43年。時の流れの速さに驚く。同時に第700遠忌当時と現在を比べると、私たちの生活や世の中は、まるで別世界になったように思える。AIの急速な進歩やコロナ禍の影響もあるかも知れないが、それにしてもたった43年で人間の生き方や考え方、価値観がこれほど変わるとは。次期遠忌の宗門の事業活動は、そうした社会や人間の変化に対応しつつ、信仰育成の「心」の活動でなければと思う▼本州で一番早く日の出を迎える千葉県。その千葉県小湊に生まれ、太平洋に昇る旭日に向かってお題目を始唱され、その太陽の「日」をお名前にされた日蓮聖人。太陽は万物のイノチの源。日蓮聖人の教えを受け継ぐ私たち。人生、いろんなことがあるが、次期遠忌を楽しみに「日と月と蓮華のごとく」、明るく浄く生きていこう。 (義)