鬼面仏心

2023年2月20日号

■かかりつけの○○

 大寒から天候不順が続き、寒修行は例年より辛いものとなった。最終日の夜、帰山した途端に「枕経に行って下さい」と告げられた。そのまま徒歩15分の葬儀場まで、故人と過ごした長い歳月を想い、太鼓を叩きながら凍った道を歩いた。すると突然、後ろから声を掛けられた▼「もしもーし、喜捨したい」。コンビニから飛び出てきた男性は「国家の安泰や世界平和を祈りながら歩いている人でしょう。こんな時代に珍しい」とポケットからくちゃくちゃの紙幣を取り出した。確かに寒修行の帰山回向では、世界平和や国家安穏・コロナ終息を祈念してきたが、「今は枕経のために歩いています」とはどうしても言えなかった▼最期まで寒修行のことを気にしていたという故人の前で、彼女が口癖のように言っていた「かかりつけのお医者さんがいるように、かかりつけのお寺さんがある。それが嬉しい」という言葉を噛みしめた。住職が次々と代わる小さなお寺で、20歳台で住職になった私。どのような僧侶になろうかと模索をしていた当時の私にはとても重たい言葉だった▼天下国家を祈ることはとても大事なことだけれども、檀家の1人ひとりと真摯に向き合っていくことも同じように大切なことだ。何よりも日蓮聖人がその草分けだったはずだ。「かかりつけのお寺」を僧侶檀信徒双方で築き上げていきたい。 (雅)

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2023年2月1日号

■仏とはなにか

 「あの人は仏さまのような人だね」といわれる人が身近にいないだろうか。「仏さまのような人」とは、常に穏やかで、どんな人に対しても平等に思いやる心で接することができる人。存在だけで苦悩を取り除き安心感を与えてくれる人。正しい方向に導いてくれ、幸せな気持ちにしてくれる人なのかもしれない▼仏教において仏に成るために必要な修行が「菩薩行」である。菩薩は「上求菩提下化衆生」の精神のもと六波羅蜜(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)などの菩薩行を続けることで、やがて仏と成る。全ての者は仏に成ることで人生の苦悩から解放され、幸せに生きていくことができると説かれる。その一方で仏に成るということは、常に人びとを救う存在としてあり続けることだ。さらにいうと仏であり続けることも容易ではない。だからこそ修行が必要なのであり、仏でありつつ常に菩薩行を修し続けているのである▼日蓮聖人は「一切衆生に十界を具足せり」(『小乗大乗分別鈔』)と仰っている。私たちの中には地獄から仏までの心がどんな人の心にも具わっている(十界互具)。煩悩に迷う心もあるが、仏性(仏の性質)がある以上、常に仏の心であり続けることができるはずである。全ての人びとが自身の「仏の心」に目覚めることで、皆でこの世を「娑婆即寂光土」にしていかなくてはならない。(悠)

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