鬼面仏心

2023年10月10日号

■97歳からの手紙

帰省した子どもや孫と一緒に嬉しそうにお参りするお婆ちゃん。小さな手を合わせる子どもたち。久しぶりのお盆らしいお盆を感じてから早2ヵ月。猛暑はやみ今は涼風が立つ▼世間ではお葬式・お墓・お寺などをいらないとする「3離れ」が進んでいるという。確かにそういう人も多くなったが、今年のお盆を見る限り、そんな人ばかりではないと心を強くした▼そんななか、檀徒のNさんが「母から住職さんに」と封書を手渡してきた。Nさんのお母さんは今年97歳になる。封筒の中には折りたたまれた1万円札と「いつもお経をあげていただいてありがとうございます。お礼もうしあげます」と1字1字丁寧に書かれた手紙が入っていた。「これは?」とNさんに尋ねると「住職さんのお陰で仏さまに守って頂いている母のお礼だそうです」とのこと。法事や祈願といった法務へのお礼ではない。自分が元気に生きていられるのは、住職の祈るお経により、仏神が守ってくれるから。その感謝のお礼だという▼「3離れ」といわれる時代。しかし、Nさんのお母さんのような心で私たち坊さんを見てくれる人がいることを、とても嬉しく思った。Nさんのお母さんに仏さまの心を感じた。同時にそんな思いで私たちを見てくれている檀信徒がいることを忘れないために、頂いた手紙を机の前に貼り、心の戒めとしている。   (義)

illust-kishin

2023年10月1日号

■遠く離れても…

葬儀の依頼を受けて駆けつけた家には、54歳で急死したご主人が眠っていた▼枕経の後、涙をこらえて振る舞う息子さんと葬儀の打ち合わせをした。その後、故人の奥さんがお茶とお菓子を出してくれた。故人の故郷・長崎の「おたくさ」というアジサイをかたどった焼き菓子だった。「旧盆に1人暮らしの母を心配して帰郷したときの主人のお土産です」という。故人にとって最後の帰郷であり、最後の家族への土産だと思うとこみ上げてくるものがあった▼翌日この「おたくさ」を元にして通夜説教をした。おたくさは江戸時代の長崎オランダ商館の医師・シーボルトに由来する。一時帰国の際、国禁の日本地図を持ち出そうとして国外追放になった彼は、日本に残した妻「お滝さん」を「おたくさん」と呼んでいた。植物学者でもある彼は、日本から持ち帰ったアジサイに、会えなくなった妻の名から「オタクサ」という学名を付けた。花言葉は「離れても思っている辛抱強い愛」だ▼枕経の時のおたくさを示し、名前の由来と花言葉を告げた。故人を想い出すとき、自分のなかで故人は確かに生きていると感じてほしいと話した。子どもたちには日蓮聖人のご遺文『忘持経事』の言葉を通して、人の身体は父母の血肉を分けたものだと伝えた。たとえ遠く離れて会えなくなってしまっても、人はつながり続ける。(雅)

illust-kishin

side-niceshot-ttl

写真 2023-01-13 9 02 09

新年のご挨拶。

過去の写真を見る

全国の通信記事

  • 北海道教区
  • 東北教区
  • 北陸教区
  • 北関東教区
  • 北関東教区
  • 千葉教区
  • 京浜教区
  • 山静教区
  • 中部教区
  • 近畿教区
  • 中四国教区
  • 九州教区

ご覧になりたい
教区をクリック
してください

side-report-area01 side-report-area02 side-report-area03 side-report-area04 side-report-area05 side-report-area06 side-report-area07 side-report-area08 side-report-area09 side-report-area10 side-report-area11_off side-report-area12
ひとくち説法
論説
鬼面仏心
購読案内

信行品揃ってます!

日蓮宗新聞社の
ウェブショップ

ウェブショップ
">天野喜孝作 法華経画 グッズショップ
">取扱品目録
日蓮宗のお店のご案内
">電子版日蓮宗新聞試読のご登録
">電子版日蓮宗新聞のご登録
日蓮宗新聞・教誌「正法」電子書籍 試読・購入はこちら

書籍の取り扱い

前へ 次へ
  • 名句で読む「立正安国論」

    中尾堯著
    日蓮宗新聞社
    定価 1,365円

  • 日蓮聖人―その生涯と教え―

    日蓮宗新聞社編
    日蓮宗新聞社
    定価 826円+税

書評
正法
side-bnr07
side-bnr07