鬼面仏心
2023年1月20日号
■ありがたい水
ひと昔前までは水道水を飲むのが普通で、わざわざお金を出して水を買って飲む外国の文化に驚いたものだ。しかし今は、日本でもペットボトルの水を飲むことが珍しくなくなった▼平家物語の中に八功徳水という水が出てくる。仏陀の清らかな世界の池にある美味しい・冷たい・きれい…などの8つの性質がある水だ。この性質は日本の名水にも一致する。日本の蔵元やウイスキーの蒸留所は名水が湧く場所に多くあるという▼またほか仏教では水のことを閼伽と呼ぶ。これはインドの言葉でアルギャに由来する。アルギャは英語になるとアクアになる。水は宗教行事でも折にふれ使われ、身近なところではお墓参りの時にも必ず水を濯ぐ。手を濯ぐのも、亡きご先祖さまに水を供えるのも、双方の心を交え、清めるという意味があるのだろう。生活のなかでもインドでは大切なお客さまが来ると金盥に水を入れてもてなす。客はその水で手を清め、主人と親交する▼人間の体の約60㌫は水分だそうだ。それだけに人にとっても水は大切だ。地球での人間が飲水可能な清水は全体の0・01㌫。安全な水を飲めない人が12億人もいるなか、日本では家庭で1日に1人あたり220㍑もの水を使うという。日本の水資源は豊かに見えるが、実際はそうではない。水に感謝し大切に使い、流れる水のような清い心で1年を過ごそう。(友)