鬼面仏心
2014年9月20日号
むかし「お客さまは神さまです」と言った芸能人がいた。
むかし「お客さまは神さまです」と言った芸能人がいた。顧客第一は芸能界にかぎらず事業繁栄の基本。そこで大事なのはいかに消費者の「ニーズ(要望・欲求)に応える」か。日本のもの作りやサービス産業はこの「ニーズに応える」をモットーに、世界をリードする活躍をしてきた▼問題はこの「モノサシ」を産業・経済界以外の分野にまで持ち込んだことだ。教育には優しさと厳しさが必要。しかし生徒が「お客」でその「ニーズに応える」ことを是とする考え方だと、厳しさは否定される。学校教育が危機的状況になったのは、教育会に「ニーズに応える」を持ち込んだためでは。宗教界にも同様の動きがある。畳の本堂に椅子を置くお寺が多くなった。足が痛いという檀信徒のニーズに応えたもの。そこには檀家=お客さまという構図が▼本来宗教とは、私たちのニーズに応えるものではない。逆にニーズする自分勝手な「心」そのものを課題とするもの。そのため宗教には「行」があるのだ▼しかし最近は僧侶檀信徒共に「行」を嫌う傾向が。宗教が安易に人々のニーズに応えることを受け入れ、「行」を否定したとき、宗教は内部から腐敗し、やがて自己崩壊をすることになる▼自分勝手で甘ったれたニーズが氾濫する時代。だからこそ、人々のニーズする「心」そのものに取り組む、「唱題行」が大事なのでは。(義)
2014年9月10日号
迎え盆の夕刻。色とりどりのお花で
迎え盆の夕刻。色とりどりのお花でいっぱいの墓地を歩いた。いつもは白黒の景色が一気に華やかになるお盆の墓地が大好きだ。そんななか、お花のあがっていないお墓がぽつりぽつり。お参りの都合がつかなかった家、無縁になってしまったお墓、事情は様々だ。待っても待ってもお迎えが来ない寂しさを思うといたたまれなくなり、お線香の束に火をつけた▼きっと明日は来ますよ…今年も一緒にお留守番しましょうか…。お題目と共にお参りのなかった墓地をまわる。するとそのうちの何件かにはお線香だけがそっとあがっていることに気付く。すぐにお隣さんと同じ香りのお線香だと解った。「こちらにまですみません、いいお嬢さんですね」「いやあ、私の孫なんですよ」ご先祖さまの会話が聞こえてくるようだった▼送り盆の夕刻、いつまでも車を見送るご夫婦の姿があった。「やっとお礼が言えました」数十年、いつもお線香を手向けてくれていた遠縁の子孫にばったり会えたという。ずっと伝えたかった感謝の思いを伝えることができた二人の笑顔にはご先祖さまの笑顔が重なった▼思いがけない出会いによって、そこにあったご縁に気付づく。たくさんのご縁に支えられている私たち。まだまだ気付いていないご縁はありませんか? かけがえのないご縁に感謝してお題目をあげた時、さらに見えてくるかもしれません。お彼岸にはまた新しいご縁が結ばれますように。(蛙)
迎え盆の夕刻。色とりどりのお花で
迎え盆の夕刻。色とりどりのお花でいっぱいの墓地を歩いた。いつもは白黒の景色が一気に華やかになるお盆の墓地が大好きだ。そんななか、お花のあがっていないお墓がぽつりぽつり。お参りの都合がつかなかった家、無縁になってしまったお墓、事情は様々だ。待っても待ってもお迎えが来ない寂しさを思うといたたまれなくなり、お線香の束に火をつけた▼きっと明日は来ますよ…今年も一緒にお留守番しましょうか…。お題目と共にお参りのなかった墓地をまわる。するとそのうちの何件かにはお線香だけがそっとあがっていることに気付く。すぐにお隣さんと同じ香りのお線香だと解った。「こちらにまですみません、いいお嬢さんですね」「いやあ、私の孫なんですよ」ご先祖さまの会話が聞こえてくるようだった▼送り盆の夕刻、いつまでも車を見送るご夫婦の姿があった。「やっとお礼が言えました」数十年、いつもお線香を手向けてくれていた遠縁の子孫にばったり会えたという。ずっと伝えたかった感謝の思いを伝えることができた二人の笑顔にはご先祖さまの笑顔が重なった▼思いがけない出会いによって、そこにあったご縁に気付づく。たくさんのご縁に支えられている私たち。まだまだ気付いていないご縁はありませんか? かけがえのないご縁に感謝してお題目をあげた時、さらに見えてくるかもしれません。お彼岸にはまた新しいご縁が結ばれますように。(蛙)