鬼面仏心
2021年4月20日号
◆権力に屈せず
恋愛小説は政治の最高の教科書だといった人がいる。恋愛の駆け引きにおいて恋慕する相手を従わせることができない場合、何が何でも自分が従わなくては恋は実らない。他者をその意思に反してでも服従させる力、これが権力というものだ▼その権力の最も強大なものが、生殺与奪の権である。縦い理に合わないことでも従わなくては命さえ奪われるとなれば忍従するしかない。旧ローマ帝国の暴君といわれたネロ皇帝などを持ち出すまでもない。今現在も世界の各地では、その最高最大の権力を行使して、人倫に悖る悲惨な行為が行われている。実に許し難いことである▼逆にこの非道な権力に屈することなく、暴虐に耐え生命をも投げ出して自分たちの権利を守ろうと挑む人びとの姿には胸が熱くなる▼800年の昔に生まれた日蓮聖人もまた権力に立ち向かった人であった。しかし大きな違いがある。自らの権利を主張し守ろうとするのではなく、世界中の人の真の幸せを願って妙法蓮華経の教えを弘めようとされたことだ。法華経の行者として、自己の利を顧みることなく敢然として鎌倉幕府という巨大権力に立ち向かい、屈することなく至誠を貫かれた▼4月28日は立教開宗の聖日。法華経の行者としての第一歩を踏み出されたこの日、聖人に続く者として、何ができるか、何をすべきか、自らに問いかける日としたい。(直)
