鬼面仏心
2025年12月1日号
■ご首題授与の一考
ある日、分厚いご首題帳を大事に抱え、自坊を訪ねた人がいた。ご朱印集めの趣味が高じ、ご首題独特の筆跡、美しさに魅了されて日蓮宗寺院を中心に参拝しているという。今では法華経の読誦や写経、法話の聴聞と熱心に活動しているそうだ。年季の入った帳面にお題目を浄書しながら、私の下手な字を見てがっかりしないだろうかと心配した▼このご首題独特の書体は日蓮聖人考案の筆法だ。楷行草を織り交ぜ、法華経の深理を表現した唯一無二の妙形といえる。特徴は四方に延びる筆運び。通称「ひげ題目」といわれるが正式には光明点という。久遠の釈尊が遍く衆生を救い照らす光明を表す。これら古来の相伝が縷々凝縮されたご首題。書写するには熟練を要する▼宗祖の孫弟子日像上人はご首題書写について重要な相伝を遺された。「悪筆あるいは無智の僧俗これを書すと雖も大漫荼羅首題等に軽意を生ぜざれ」▼お題目の唱えに聖凡上下がないように、誰が書写しようがそのご首題を軽んじてはならないとの指南だ。私の悪筆も救われた思いだが、同時にブームに乗じた軽意なご首題授与にも一考した▼一方で寺離れが進む昨今、授与したご首題の光明が未信徒教化の端緒となっている事実も見逃せない。私たちの宗旨の根幹お題目。それを授与するという意味。今一度心して書写し、心して拝受されたい。 (子)




















