鬼面仏心
2023年4月20日号
■仏さまからの贈物
「その時に龍女、一つの宝珠有り、価値三千大千世界なり。持って以て仏にたてまつる。仏即ち之を受けたもう」▼『法華経』の提婆達多品には龍女が釈尊に宝珠を献上する場面が説かれている。龍女が持っていた宝珠は三千大千世界の価値がある。すなわち「世の中の全ての人は仏になることができる功徳を持っている」ことを示している。龍女の宝珠は、私たちの中の「仏性」であり、法華経に説かれる龍女の即身成仏は、全ての人びとが仏に成ることができる証なのである▼世間では、特別な才能を持つ人、天才を「ギフテッド」というが、これは天から与えられた特別な贈り物という意味でもある。ただギフテッドは特別な能力で、皆が具えられるものではない。しかし私たちは仏さまからそれとは違うギフトをいただいている。それが「仏性」だ。仏性は私たちの中に平等に具わっているのである▼「女身」「畜身」「幼稚」の龍女が、その身そのままの成仏=即身成仏を示したことは、例えどのような人びとでも、自分の生き方によって必ず幸せになれると教えている。なぜなら全ての人びとが仏の心を持つ尊い存在であると気付くことができれば、他人と比べて自分を卑下する必要がなく、すべてを大切に思いやる心を持つことができ、心穏やかな世界が実現していくからだ。(悠)

2023年4月1日号
■いのちに合掌
コロナ禍、ロシアの暴挙と暗雲立ちこめる中、上京し久しぶりに対面の会議に出席。晴れやかな気分に浸ることができた。大雪の予報が出ていたので急ぎ帰宅の途に就き、京都駅からローカル線に乗り継いで予定より早めに帰り着いた▼大雪だと大騒ぎした割には大禍もなくよかったと思っていたが、テレビを見て驚いた。京都市内でも列車が立ち往生して何時間も乗客が閉じ込められていたという。逆方向だったのでよかったと安堵した▼ところが「お父さん、無事帰れましたか」と離れて住む家族からメッセージが入ってきたのには驚いた。筆者が乗ったローカル線も、すぐ後に雪で動けなくなり乗客に水とビスケットが配られたのだという。「ビスケットを戴かずに無事に済んだ」と返信したが、少しの時間差で何が起こるかどんな出来事にあうか、改めて考えさせられた▼いのちを戴き、この世に今在ること自体が不思議の力によるというほかない。さまざまな危機や危難を乗り越えて今がある。1人自分の力だけでどうにかなるものではない。同様に自分以外のいのちについても、互いに他のすべての存在、すべての力に生かされて今がある▼日蓮聖人は「いのちと申す物は一切の財の中に第一の財なり」と説かれているが、互いが互いのいのちを認め合掌し真に尊ぶならば、世界を覆う暗雲も消し飛ぶにちがいない。 (直)
