鬼面仏心
2021年6月20日号
◆世界はひとつ
今年は食卓に筍がよく出た。山間地にある自坊には竹藪がある。手入れしない筍は、姿はよくないが美味である。ただ例年だとイノシシが先に食べてしまうので、ご宝前にお供えするのが精一杯で、我々が口にすることができない年もある▼ところが今年は1本も被害に遭わなかった。春が早く来て山に食べ物があったためだろう。しかしそれだけではないらしい。イノシシに詳しい人に聞くと、野生のイノシシも豚熱(CSF)にやられたようで、姿をほとんど見ることがないという。養豚農家の甚大な被害状況には少なからず心を痛めていたが、まさか自坊の筍にまでその影響があるとは、思いもしないことであった▼豚熱の治療薬はなく、感染の拡大を防ぐしか手がないそうだ。因みに大阪府は感染拡大を防ぐため、野生イノシシに対する経口ワクチンの散布を過去2回行っているという▼感染の蔓延と聞いて浮かぶのは、新型コロナである。あっという間に世界中に広がりさらにイギリスやインドで発生した変異株が、今や身近に迫っている。人間界も自然界も、世界はまさに1つに繋がっているのだと改めて実感する▼すべての事象・現象は縁によって起こるという縁起の思想は仏教の基本であるが、縁を壊すのも活かすのも人間だ。世界中の人々が一丸となって、この禍を仏縁にそして仏果へと繋げていかねばならない。(直)
2021年6月10日号
■賞味期限
現在標準となったエコバッグを肩に掛け、「はじめてのおつかい」をしたが、早速妻に怒られた。賞味期限が明日だと言うのだ。妻云く「奥から取る」のがテクニックらしい。翌日、スーパーの棚の奥から取ると、なるほど賞味・消費期限が違っていた。うれしくなって一番奥の物をと体を目一杯伸ばして取る。しかし、冷静になって自分のその姿を想像してみると、なんとあさましい姿かと思うその姿は自分だけは少しでも新しい物をという欲にまみれた心だ▼テレビでSDGsについてやっていた。世界では飢餓に苦しんでいる人たちがいる一方で、日本では毎日1人が茶碗1杯分の食品ロスをしている計算になる。それは実は、消費者が棚の奥から食品を取るためにコンビニやスーパーは期限切れ直前の物を捨てなければならないからだという▼江戸時代はリユースな社会、つまり持続可能な社会であったという。それが現代の日本人はどうか? 常に新品を追い求めてはないだろうか。例えば新しいスマホが出ればそれに飛びつく。「もったいない」の精神が以前外国で紹介されたが、無駄がないという社会が日本人の美徳ではなかったのか▼反省した私は3度目のお使いで棚の手前から取るようにした。今度こそは褒めてもらえるとワクワク。しかし「この菓子パン、やっぱり賞味期限が明日よ」と。賞味期限にはご用心。(友)