鬼面仏心
2020年7月20日号
この文章が掲載される頃、
この文章が掲載される頃、新型コロナウイルス禍はどの程度収まっているだろう。多くの人命を奪い、世界中を震撼させ、人間が長年積み重ねてきた生活や仕事や伝統ある生き方さえ変えさせたコロナ禍。3密と不要不急の外出を避け、首をすくめて過ごした数ヵ月。世の中全体がコロナ禍を軸に大きくねじれたように感じる。コロナ後の社会が心配だ▼密閉・密集・密接の3密は感染予防上重要だ。しかしこの3密がコロナ後も続き、人間関係に大切な「密接」が排除され、孤立化・孤独化・引きこもり化を一層進めることになるのでは▼また、不要不急の外出はせず、生きるための必要最小限度に、という呼びかけ。仏教界もこれに協力。諸行事の中止やお墓参りの自粛、お通夜やお葬儀も家族で、と。コロナ時の対応としては良識ある対応だ。しかし反面、これまで大事にしてきたお寺参りやお葬式といった宗教行為が、生きる上での必要最小限度、不要不急の行為ではなく、命に比べて重要ではないということを示したことになる▼怖いのはコロナ後だ。コロナ時の緊急対応がそのままコロナ後の社会の本流となり、墓・寺・葬式の3離れを一層進め、宗教や信仰は大事ではないとする考え方が広がることだ。失った宗教への信頼と信仰への情熱をどう取り戻すか。信仰回復のための宗教者の努力と活躍を期待する。(義)
2020年7月1日号
■切磋琢磨
朝の連続ドラマ「エール」を見ていますか? 今回はコロナウイルスと対峙する念仏者と題目者のエール交歓の話▼友人の他宗僧侶から、1冊の本が送られてきた。地方新聞の人生相談の回答者としての答えをまとめたものだ。あとがきに「コロナ禍の現在、僧侶は何を発言し行動できるのか。考え続けている」とある。共感し、読後の感想を伝える電話をした▼月忌参りの時、檀家にコロナ退散のお札とマスクをセットで配った話を伝え、「檀家制度が日本仏教をダメにしたというけれど、ホームサービスという視点でみると潜在力はスゴイ!」と話すと、「今からのお寺は、檀信徒との信頼関係の強さが問われるだろう」と返ってきた。彼は自坊を法務の資格をとった坊守(寺庭婦人)にまかせ、自身は病院付きの僧侶として医師とチームをつくり患者の精神ケアにあたっている。志高き社会派僧侶だ▼叱られるかなとも考えたが、医療現場にいる彼の健康を祈って日蓮宗の祈祷札を送った。すると「祈りはお任せするとし、コロナ後のケアは共通の仕事だ。お互い頑張ろう」と返事がきた。「御札はもらっておきます。ありがとう」というメッセージも届いた▼苦しみとか悲しみとか、寺に行けば何とかしてくれる。生老病死、その時々の人の苦に寄り添い救済するのが僧侶。お寺や僧侶のあり方を、これからも彼と切磋琢磨していきたい。(雅)