鬼面仏心

2015年7月20日号

7月は東京、8月は地方。お盆は国民的仏教行事だ。

7月は東京、8月は地方。お盆は国民的仏教行事だ。しかし最近はお盆の持つ亡き人を偲び、供養するという本来の宗教的意味が忘れられ、海外旅行やレジャーを楽しむための単なる休日と化していることが気になる▼西洋と日本の文化を分けるのは、「と」と「の」というたった一字の文字だという。人や物との関係を「と」で考えるのが西洋文化で、「の」でつなぐのが日本文化。親と子、夫婦を対等の個人、別々の存在とする西洋的思考だ。一方「の」の関係とは、ウチの子、私のあなたというように、自他を一つと考える日本的思考である▼この「の」の思考を人との関係だけでなく、動物や植物、山川草木、天地宇宙の万物、さらに死者の世界や時間を超えた世界にまで広げて考える。それが日本文化の基底となった仏教の「縁起」の思考であり、「一念三千」の世界だ▼「我が頭は父母の頭、我が足は父母の足、我が十指は父母の十指、我が口は父母の口なり」(『忘持経事』)と説かれた日蓮聖人。父母と自分が「の」で結ばれた時、父母と自分は一体になり、一体だからこそ父母と自分は「同時の成仏なり」と説かれたのである▼迎え火、送り火、精霊棚、盆踊り、灯篭流し。お盆とは、生者と死者が一つになり、自分を優しくする、とても素敵な「たましい」の祭り。風化させないようにしたい。(義)

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2015年7月10日号

「プレゼント」。ワクワクする響き♪ 

「プレゼント」。ワクワクする響き♪ 大人になってもリボンをほどく瞬間はドキドキする。品物はもちろんのこと、自分のことを一生懸命に考えて選んでくれた気持ちが何より嬉しい。そして「プレゼント」は頂いた人だけではなく、贈る人も幸せになれる。「似合うかな? 気に入ってくれるかな?」大切な人の喜ぶ顔を想像しながらのプレゼント選びは贈る側にとっても、幸せな時間となる。値段や大きさは問題ではない。さまざまな形に姿を変えた真心はプライスレスだ▼父の日・母の日・こどもの日・敬老の日…プレゼントを贈る機会は多々あれど、その中でも特に気持ちを込めるのが誕生日だろうか。平成33年2月16日、私たち日蓮聖人門下にとって特別な日がくる。聖人800回目のお誕生日だ。宗門ではさまざまな慶讃事業が進められ、報恩の気持ちが形になろうとしている▼かつて聖人は信徒の方々からさまざまなご供養を頂いた。お米・麦・お芋・衣など、贈られたどの品に対しても、込められた真心に感謝し、その尊さを讃えられた。そして贈る側は、お慕いしてやまない聖人へご供養できる喜びで一杯だったに違いない。▼さあ御降誕八〇〇年! 大好きな聖人へのプレゼントは何にしましょう♪ ひとりひとりがそれぞれの真心を贈り、聖人の笑顔、私たちの笑顔、日本中が笑顔で溢れる御降誕八〇〇年を迎えましょう♪   (蛙)

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2015年7月1日号

人間は2度死ぬという。まず死んだ時。

人間は2度死ぬという。まず死んだ時。それから忘れられた時。私は忘れないために、昭和の大横綱大鵬のことを書こうと思う▼圧倒的な存在の象徴として語られた「巨人・大鵬・卵焼き」に対して、九州生まれの私は「西鉄・柏戸・目玉焼き」と言い換えて頑張っていたが、その存在感は揺るぎもしなかった。高度成長の時代、負けない横綱は日本の夢であった▼大鵬の法号は「大道院殿忍受錬成大居士」、大鵬が愛した「忍」の一字が入っている。「心の上に刃を載せて生きていく、必死に生きてきた私の人生を表している」と大鵬は言う▼忍には、あらゆる苦難を耐え忍ぶ「衆生忍」と「無生法忍」がある。後者は悟りの智慧の働きにより世界をあるがままに正しく観察することを指す▼大鵬は語る。「私は負けが許されない。だから負けない相撲。つまらない相撲しか取れなかった」と横綱に同時昇進したライバル柏戸は、勝つ時は豪快だがあっさりと負けもする強さともろさを持った横綱であった。あっけない負けが許される柏戸を「正直うらやましかった」とも述べている。世間から期待される役割を理解し、大横綱の誇りを保つということは、大鵬にとって心の孤独との戦いであった▼その生い立ちから続く苦難が遂に家族に対する愛情の深さにつながったたのもむべなるかなである。忘れるとは「心を亡くす」と書く。私は大鵬を忘れない。(雅)

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