鬼面仏心
2018年3月20日号
昨年12月17日、カザフスタンの
昨年12月17日、カザフスタンの宇宙基地から、日本人宇宙飛行士・金井宣茂さんを乗せたソユーズ宇宙船が飛び立ち、19日に無事宇宙基地とドッキング。6ヵ月間の長期宇宙滞在を始めた▼ライト兄弟が有人動力飛行に成功したのが、1903年。それからわずか60年後に旧ソビエトは有人宇宙飛行を実現。そしてその8年後にアメリカはアポロ計画で人間を月に送った。科学の進歩とそのスピードには驚く▼「蒔かぬ種は生えぬ」「火のないところに煙は立たない」という諺。物事には必ず原因があり、結果はその原因の上に成り立つということ。これが仏教の説く「因果」だ。「因果」とは1+1=2ということだ。それを3や4にするには別の力がいる。科学もこの「因果」の原則に立って成り立つ▼仏教では神(絶対者)による宇宙の創造や人間の救済といったことを説かない。それは因果を否定する考え方だから。科学も同じだ。もし神という存在を認めたら科学は成立しなくなる。因果を基本に置くという点で、仏教と科学は兄弟といえる▼金井さんを宇宙に送った最先端の科学が、仏教の因果の上に発展したと思うと嬉しくなる。ちなみに金井さんは、ラスベガスの国際布教師・金井勝海師の甥、ネバダ日蓮仏教観音寺の金井勝陀主任の従弟だ。宇宙で加齢の研究や新薬の実験を行うという金井さん。6月の無事帰還を祈ろう。 (義)
2018年3月10日号
娘の通学路でいつも会うおじちゃんがいる
娘の通学路でいつも会うおじちゃんがいる。ビルの駐車場で働いているそのおじちゃんは、毎朝元気に「おはよう!行ってらっしゃい!」と見送ってくれる。ところが、たまに声のトーンが低い日があり、どうしたのかな? と思っていた。すると先日、思わぬことでその理由が判明した▼それは遠足の日の朝のこと。お弁当やおやつを詰め込んだリュックを背負い、水筒をぶら下げてウキウキの娘たち。「おっはようございまーす♪」いつもよりオクターブ高い声でご挨拶。するとおじちゃんもつられて「おっはよー!!」いつにも増して元気な声が返ってきた。ん? するとその逆は…? そう、おじちゃんが何となく暗いと感じた日は、娘たちの声が暗かったのだ▼小学生の朝は慌ただしい。特にうちの娘たちは(笑)。ハンカチ持ったの? ティッシュは? マスクして! は毎日のこと。帽子はどこにやっちゃったの?! どうして昨日のうちに用意しておかないのっ!! 叱られた朝はきっとドンヨリしていたのだろう。もちろん私も。元気のない「おはようございます…」には同じような「おはよう」が返ってきていたに違いない▼自分の心ひとつで相手が変わる。あらゆることは心と心の響き合いから生まれる。周りの態度や状況にあれっ? と思った時は、自分自身を振り返ってみる時なのかもしれない。明日の朝も娘たちと元気な挨拶をしていこう♪ (蛙)
2018年3月1日号
「自分で考えていた以上に
「自分で考えていた以上に病気が進行していたみたい」。見舞いに行った人の報告を聞いて、すぐに檀家さんの許へかけつけた。ショックを受けた様子の檀家さんから「日蓮聖人のご病気と最期」について尋ねられた▼宗祖が病気を自覚されたのは、55歳の頃からだとある。建治3年、56歳の時から翌年にかけて、下痢の症状が続き、悪化していった様子がお手紙から拝察できる。「はらのけ」「やせやまい」とご自分で書かれた病名は、慢性的な胃腸障害からくるものであろうと推測される。「既に一期おわりになりぬべし」と思いを深くしたのは、59歳の時である。それでも、心を合わせて信心に励むように、門下の信徒を諭し続けている。最晩年には「命はかぎりある事なり、少しもおどろく事なかれ」と覚悟し「やまいは、仏の御はからい」との境地を示された▼最悪のケースを考えている檀家さんのは、言葉を選びながら、生きることを諦めずに、最期まで、成すべきことを成した宗祖の姿を話した▼面会の終わりに、身延山第91世藤井日光猊下の話をした。私が担当した僧侶を養成する信行道場で、道場生から「身延山での日蓮聖人は?」と質問を受けた法主さまは「聖人は、身を削り命を削って最後まで、門下の指導に当たられたのですよ」と涙ぐみながら話されたエピソードを伝えた▼覚悟を決めた檀家さんは手術を受け、今、回復の途中にある。 (雅)