鬼面仏心

2019年2月20日号

◆立ち止まる勇気

豚コレラの感染が広がっている。昨年国内では26年ぶりに発生が確認され、一気に拡大したという。その要因の1つが野生イノシシだという説もある▼豚コレラについては1日も早い感染の終息を祈るばかりだが、イノシシには少々言いたいことがある。今年は吾が年とばかりに例年にもまして傍若無人な振る舞いを続けているのが目に余る。一夜にして庭の苔は掘り返され、石はひっくり返されて、まるで耕した畑のようになっている。庭のミミズを探して掘り返すのだ。参詣者から「お庭の改造をされるんですか」などと声をかけられては、苦笑いするほかない▼庭はまだいい。作物を荒らされる農家はたまったものでない。また、イノシシが街へ出てコンビニを荒らし回ったというニュースも記憶に残る▼本来野生の動物は人間に近づくという危険は冒さない。それが出てくるというのは、環境の変化により食物がなくなってきたからだ。その環境を変化させたのは私たち人間である。私たちが快適さを求めて、飽くことなき無秩序な環境破壊を続け突っ走ってきた結果なのだ▼ではより良い地球環境を取り戻すにはどうすればよいのか。まずは、その私たち自身の在りようを知り改めることから始めなくてはならない。猪突猛進ではなく立ち止まり、考え、時には戻る勇気を、1人ひとりが持つことから始めるべきである。(直)

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2019年2月10日号

◆言を射る

「お元気で。さようなら」。月命日のお参りのあと、いつも聞く言葉だが、その日は違って聞こえた。90歳になる女性のお檀家さんのお別れの時の挨拶だ。その2つの言葉が妙に心に残った。自分も相手も来月は病気などして会えないかもしれない。本当に最後のお別れかもしれないと頭によぎった。あふれる情感が胸中を駆け巡る。その思いが互いの心を通わせる大切な言葉だと教えられたような気がした。いつも以上に丁寧に合掌し、感謝しつつ頭を下げた。「謝」という字は弓で言を射るようにしっかり届けるという意味に解したい▼風邪のせいか声の出し方が悪かったのか、突然声が出なくなった。数日続いたので病院に行った。看護師さんに「お葬式があるのに心配だ」と、何気なくいうと、少し気弱になっていると思われたのか「心を籠めるときっと伝わりますよ」と慰められた。いつもこちらが言っていることだ。が、心が軽くなったような気がする。檀信徒も相談に来る時にはこんな気持ちなのかと知った▼癒し、救いを感じるのはこのようなことも含まれよう。自分の心を汲んでくれた、認めてくれた、居場所を感じたなど。それらをどう汲み取り、与え、伝え続けていくか。常に心したいものだ▼〽家にいて 娘と会話 ラインにて(第一生命「サラリーマン川柳」)。というのではどんな声も心の底までは届くまい。(汲)

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◆ヒヨドリの親子

やんちゃな娘に手を焼き、気分転換に…と思い、庭に出るとヒヨドリの親子がいた。境内にはさまざまな鳥がやって来るが、昨年はヒヨドリが庭で子育てをしていた。卵を暖め、せっせとヒナに餌を運び、飛び方を教え、巣立ってからもつかず離れず餌の捕り方を教えていた。誰に習ったわけでもないのに…と、その見事な育児ぶりを感心して見ていた。「どうして学校では子どもの育て方を教えてくれなかったのかな…」なんて愚痴を言っている自分が恥ずかしくなった▼言うことを聞かない子どもにイライラし、子育ての意味を見失っていた私に「子どもが元気に巣立てばいいじゃない♪」、ママヒヨドリはそう言ってくれているようだった▼子どもに「こうあるべき、ああなって欲しい」、つい理想を押し付けてしまうが、そう、子育ての目的は子どもを独り立ちさせることだった。では独り立ちとは何だろう? 〝誰の力も借りずに1人で生きていく〟ことだろうか。生きとし生けるものは皆、生を受け、他の命をいただいて命を繋ぎ、太陽の光を浴びて成長する。全てが支え合って生きていることを知り、その恩に感謝して生きられることが本当の意味での独り立ちなのかもしれない▼きっとヒヨドリはかつて親鳥にしてもらったように子育てしているのだ。私も母からの愛情をしっかりと受け継ぎ、改めて母を倣って子育てに向き合っていこうと思う。(蛙)

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新年のご挨拶。

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