鬼面仏心
2013年6月20日号
ないと困るが、降り続いても
ないと困るが、降り続いても心配なのが雨。崖崩れなどの大災害とはならないまでも、身の回りにもたらす雨や湿気の害は見過ごすわけにはいかない。特に梅雨のこの時期、作物にとって大切な雨だとわかってはいるが、ジメジメムシムシの中、作物ばかりかカビや食中毒の菌までが繁殖しては、やっかいきわまりない▼大切な法衣も黒いカビにやられそうになったが、風を通し陽に当てて何とか事なきを得た▼虫干しまたは土用干しともいい、夏の土用の頃に衣類を乾す習慣があるが、からりとした晴れ間に、湿気った衣服を乾すだけで気持ちよく日々を送れるとは、先人の知恵はさすがだと思う▼風に当たり、陽光を浴びることにより爽やかになる。これは衣服ばかりではなく、私たち自身にも言えることではないだろうか。いつも同じところで同じように時を重ねるだけでは、心を外気に触れさせることもなくなってしまう。淀んだ空気の中で心の動きも停滞し、まるでカビが生えたかのように、心のハリが失われかねない。心に風を通し陽に当てることも時に必要なのではないだろうか▼「妙とは蘇生の義なり」と宗祖のお言葉にあるが、法華経お題目の風に当たり、教えの光に心の隅々まで照らされることによって、湿った心が再生するというのだ。菩提寺の行事や信行会などで、外の空気と陽光をたっぷり取り入れてはいかが。(直)
2013年6月10日号
日本は資源のない国
日本は資源のない国と言われている。が、ここに来て「都市鉱山」という言葉を見聞きするようになった。携帯電話、ゲーム機、家電製品の部品に使われている金や白金、レアメタルなどの有用金属がそれだ。その眠っている資源は金ならば7千トンで、世界一の埋蔵量を誇る南アフリカの6千トンを超える規模だ。使用済み機器から毎年取り出される価値は総額844億円という(「『都市鉱山』開発」日刊工業新聞社)から驚きである▼民芸運動を起こした柳宗悦氏は、生活に即した民芸品に注目して「用の美」を唱えた。本来使われるべくして作られたものは、使われてこそ美しいという。美術館に展示されている楽茶碗や高麗茶碗、水差しなども、美術館にあるよりも茶室にあって使われているときほど存在感を示し、その輝きを増して見せる▼望まれる上司の条件に部下の長所を見つけて、伸ばしてくれることが上げられる。次の世代を担う有能な若者が自分の潜在能力に気付かず、眠ったままにいはしないか。力を伸ばし切れていないか。機会を与え時には厳しく時には寛容に見守り、導いていかねばなるまい▼檀信徒にも協力して戴こう。「うちのお上人はこんなことが出来ます」と知らせてほしいのである。貴重な有用金属たる若い僧侶を知らずに眠らせていてはあまりにももったいない。(汲)
2013年6月1日号
2人の孫がお世話に
2人の孫がお世話になっている私立小学校で、開校以来「三方よし」を教育のメーンテーマに掲げている▼「三方よし」とは近江商人の「売り手よし、買い手よし、世間よし」が源になっていて、現代では「自分よし、相手よし、みんなよし」と表現される。この学校ではいつも周りの人たちのことを考えるように児童を指導している。昨今の少子化で1学年50人ほどしかいないが、1年生から6年生までが家族のように助け合い、支え合っている様子が微笑ましい▼この学校を卒業した子供たちはさぞ世間に好かれているのだろうと思うのだが、驚くべき報告があった。某国立大学附属中学校に進学した卒業生が「三方よし」を実践しようとして陰湿ないじめにあっていた。小学校で児童会長まで務めた彼は、持ち前の正義感と勇気あふれる男子生徒だ。それがことごとくいじめの対象になった。その中学校では勉強に励むことが最優先事項なのだ▼近江商人は、得た利益で橋を架け学校を建設したという。周りの人たちが幸せになれば、自分もまた儲けさせてもらえる。世界全体が幸せにならなければ個人の幸福はないと宮沢賢治は言った。自分一人だけの幸福などあり得ない。残念なことに殆どの教育現場では他人のために努力するという価値観も、世間に好かれる人間になるための方法も教えない。僧侶にできる仕事は多い。(寮)