鬼面仏心
2023年12月20日号
■肯定形で生きる
ウォルト・ディズニーの「しなければならない仕事には、よく見れば必ず楽しい要素がある」という言葉を人生の指針にしている営業マンがいる。「仕事は大変?」と聞くと「大変だけど、楽しい」と答えた。どうしたら相手のためになるのかと楽しんで考えながら仕事をしているのだろう▼そんな彼の食事の際の第一声は必ず「ああ美味しい」である。マズいという言葉を聞いたことがない。わけを尋ねると「食事は雰囲気。美味しいといえば何でも美味しくなる」と、なるほどと思える言葉が返ってきた。どんなにささやかな食事でも、皆の心が明るければ楽しくなり、高価なご馳走でも雰囲気が悪ければ砂を噛むような料理にもなる▼「そんな知恵はいつ身についたの?」と聞くと彼は「母の影響」と答えた。聞けば彼の母は会う人ごとに「良かった。今日あなたに会えるなんて。縁よね。縁て不思議なものよね」と話し始めるそうだ。そう話しかけられたら、誰でも嬉しくなるだろう。「だから母は友だちが多かった」と懐かしそうに話してくれた▼仏さまには周りの人を明るくする力がある。人生を肯定的に受け止めるとき、仏さまの後押しが生まれる。ウォルトの言葉は人のための智慧。営業マンや母はその場を良くする雰囲気。営業マンはどちらの方法も人生や人のために活かして、いきいきと生きている。 (雅)
2023年12月1日号
■四海帰妙
カタカナ語が多すぎる、とはずいぶん前からいわれてきたことだ。テレビなどで、知識人といわれる人が日本語で通じることを英語らしき言葉で発言しているのが耳につく▼かくいう筆者は関東弁・関西弁などは使い分けることができるが、外国語となるとまったく自信がない。それでというわけではないが、仏教の専門用語なども可能な限り日常用語で説明できないかと努力している。というのも、仏の教えは深淵ではあるが、その出発点は人がより良く生き、生活するための教えに他ならず、普段使う言葉であってこそ自然に心の中に入り、共感を得ることができるものだからである▼とすれば日本語以外の言葉で生きている人たちに法華経や日蓮聖人の教説を伝えるには日本語ではなく、その国の言葉によらなくてはならないことになる▼それぞれの国の人びとにそれぞれの言語で伝えることがいかに重要か。国際布教の現場で長年の間、望まれていたことがこの度ついにその実現の端緒についたのである▼身延山久遠寺に第1回外国語信行道場が開設され、35日間英語を主たる言語としての訓育が行われた。10月30日、その修了式が行われ、英語を日常語とする8人の日蓮宗僧侶が誕生した▼世界に法華経の教えが弘まり、全ての人が法華経に帰するという、宗祖の掲げられた目標達成に向かって、彼らへの期待は大きい。(直)