鬼面仏心

2021年9月20日号

■少欲と知足

 コロナのために1年延期になり、開催も危ぶまれたオリンピック、パラリンピック。無観客という厳戒態勢の中、多くの感動と勇気を残し、無事に終了した。一方コロナ感染の輪はさらに拡大。先の見えない不安と焦りが広がっている▼宇宙飛行士の野口聡一さん。5ヵ月間狭い宇宙船で過ごし無事帰還。コロナ禍に苛立つ私たちに語った言葉が印象的だ。「宇宙は究極の隔離生活。その中で生きるには〈ないものはねだらない〉こと。逆に今ある〈もの〉や〈こと〉を大切にするのが宇宙での生活を楽しく過ごす秘訣。同時に幸せの秘訣なのでは」と。あれが食べたいこれが欲しいといっても宇宙では無理。無理なことを望むから苦しむ。そんな〈ないものねだり〉より大事なのが、宇宙にいる今を大切にし、その今を楽しむことが幸せの秘訣だと▼法華経には「少欲知足」という教えがある。「少欲」とはないものを欲しがらない心であり、「知足」とは今ある物や状況に満足し感謝する心のこと▼コロナは人から人へ感染する。宇宙船地球号の乗員の私たち。全員が幸せに生きるには、1人ひとりがないものをねだりを「少欲」の心と、不自由はるが生きている「今」に感謝する「知足」の心で生きることが大事。コロナと共存して生きなくてはならないこれからの私たち。「少欲知足」は幸せのための智慧ある生き方では。(義)

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2021年9月10日号

■花を咲かす心

 牡丹や紫陽花・芍薬や桔梗・百合やグラジオラス…。かつて我が家の仏さまには、いろんな季節の花がお供えされていた。母が毎朝、草取りや施肥など丹精込めた裏庭の花々だった▼高齢になった母に頼まれ、初めは庭を手伝った私だが、煩わしくなり、たまに機械で草刈りするのみに…。それでも毎年雑草の間に逞しく咲く宿根草や球根花を、購入した供花に添え、お盆には供えてきた▼だから、今年もそのつもりで、花切鋏を手に裏庭へ向かったのだが、そこに花はなく、ヨモギやブタクサ、ススキなどが辺り一面に生い茂るばかり▼昨秋、母が病も重なり介護施設に入所して以来、私は人目につかない裏庭を放置していた。仕事や家事の忙しさを言い訳に、目を背け続けるうち、いつしか庭を振り返ることもなくなり、気づけば、母の庭を荒れ地に変えていたのだった…。自分の都合や言い訳ばかりを盛んにし、大切な真心を見失い、花や庭だけでなく、母の生き方や心までも踏みにじっていた私。情けなくて申し訳なくて涙がこぼれた▼あれから、かつての母を真似て少しだけ早起きし、庭で草取りをしている。今は、あの頃の母の丹精がわかる気がするのだ。花も草も庭に息づくすべてのいのちがこんなにも愛おしくて尊くて、きっと、仏さまにご供養せずにはいられなかったのだと思う。そんな真心を、これからは大切にしてゆきたい。(花)

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2021年9月1日号

◆ふたつの居士衣

 眼前に昭和55年1月1日発行の全日青(全国日蓮宗青年会)の機関紙「全國日青」がある。昭和55年といえば、宗祖日蓮聖人700遠忌を翌年に控え、全日青は一大プロジェクト「全国縦断唱題行脚」出発の年と定めていた。サブテーマに「唱えん‼ 世界平和を」とある。沖縄慰霊の日に沖縄を出発した北上コースに私も参加した。その時、私が着帯していた行脚用の居士衣はフィリピンで戦病死した師匠寺の先代の形見で、昭和8年購入と書かれた木綿製で、継ぎはぎだらけの色落ちしたよれよれの年代物であった。これに荒行堂用の兄弟子の麻の五条を着けた私は、戦争で命を落とした先代への想いもあり、意気高らかに行脚した。途中、師匠寺にも立ち寄り。玄題旗を九州から本州へと渡すコースを歩き終えた▼後日、師匠から新品のテトロン製の居士衣を渡された。「檀信徒からあまりにも粗末な衣を着ていたと話題になってなぁ…。ワシは事情は知っていたが、寄付申し出を受けた。これは素直にもらっておけ。目立ってもいい。その裏付けをちゃんとしておけばな」。師匠の言葉と真新しい居士衣を受け取った▼木綿とテトロンの居士衣には、真摯に平和を祈った真夏の唱題行脚の汗と檀信徒の思いやりがしみ込んでいる。平和への祈りと人への感謝を忘れぬよう、このふたつの居士衣は今も大切にしている。(雅)

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