鬼面仏心
2021年2月20日号
◆タンポポ
春の陽射しに照らされ、あぜ道に黄色い花を咲かせるタンポポ。日本の原風景を感じさせるが、都会の道の片隅にも見ることができる▼実は、都会に多いのはセイヨウタンポポと呼ばれる外来種で、元々日本に生息していたニホンタンポポとは異なる。花のつけ根にある総苞と呼ばれる部分が閉じているのがニホンタンポポで、簡単に見分けることができる▼どちらもタンポポには違いないものの、ニホンタンポポは単体では種をつけることができない。対してセイヨウタンポポは単為生殖で、しかも種が軽いので遠くまで飛んでいくことができる。当然セイヨウタンポポのほうが縄張りを広げていき、ニホンタンポポは落ち目になっていくと考えられる。しかし交雑という手段で、ニホンタンポポは種を伝えていくのである。中々したたかなヤツである▼更にすごいことに、タンポポは根が50㌢も伸びるという。引っこ抜こうにも容易ではない。葉や茎は枯れたようでも土中に眠り、時節到来となれば一気に復活する。雑草として刈り取る者にとっては厄介者だ。しかし、たんぽぽコーヒーとして愛飲されたり、薬草として人の役にも立っているのである▼コロナ禍にある我が身に当てて考える。雪に埋もれても春になれば可愛らしい花を咲かせるタンポポのように、人を和ませる笑顔を絶やさず、春の到来を信じて過ごしたい。(直)
2021年2月1日号
■自分の十界を見る
知り合いがコロナに感染し、入院となった。話によると熱が出たら解熱剤、咳が出れば咳止めなどが処方され、自らの体力を基にした闘いだったという。買い出しはあるが、飲み会や食事会は当然せず、自粛しながらの感染だった▼退院した当人曰く、「忙しく、体力が落ちていた時期で免疫力が下がっていたのかな」と推測する。コロナの闘病は体力勝負のようだ。確かに専門家が言うように日頃から生活リズムを整え、疲れを溜めないことが免疫力を高めることに繋がるのか▼子ども時代、夜9時には必ず寝かしつけられていた。今では9時より遅くに親が子どもを連れての買い物姿をよく見かける。食べ物にも恵まれ、人は健康になったように見えるが、どうだろう。多くは必要がない内容を深夜まで垂れ流すテレビ。インターネットに繋げば動画やメッセージ、ニュースの氾濫。数年、数十年前はこれら幾つかはなかったが、楽しく生きていた。かといってそれらを全て排除した世の中を求めることもナンセンスだ▼コロナを乗り越えるためには自省による自制、つまりコロナ禍の混乱だからこそ、自らの貪瞋痴や仏心などを見つめ、自分のどういう行動が収束に寄与するのかを考えられる機会になっていると思う。コロナ渦中、コロナ後。社会の仕組みの変化だけを言うのではなく、心を変えていかなければ繰り返すだろう。(緑)