鬼面仏心
2013年3月20日号
立春を過ぎ、暦の上でも
立春を過ぎ、暦の上でも新年を迎えた。昭和28年生まれの方は、今年還暦を迎えられる。還暦には「赤いちゃんちゃんこ」を着て長寿を祝うというのは過去の話だろうか。今は「赤いベスト」や「赤いパンツ」を贈ることもあるという▼還暦とは読んで字のごとく、暦が還ることをいう。十干と十二支の最小公倍数が60であることから、生まれ年の干支が60歳の時に初めて還るので還暦というのだ▼織田信長は、幸若舞『敦盛』の一節をこよなく好んだ。「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり…」。日本中世の人々の平均寿命は50歳。江戸時代においても60歳を越えたぐらいか。そう考えれば、60歳の還暦は長寿の祝いであろう。還暦を迎えることができたことへの感謝と、さらなる長寿を願って「赤い物」を身につけるのだ。なぜ赤い物なのか、それは赤ん坊による。生まれたばかりの赤ん坊は生命力に満ちあふれている。60歳となり、暦も生まれ年に還ったので、この生命力にあやかろうと「赤い物」を身につけるのだという▼60年の人生には、数限りない経験が積み重なっている。私が還暦になったときに、諸先輩方のような経験を身につけていることができようか。赤い物を身につけた時、「こんなはずでは」と思うことのないよう、日々精進していきたい。(奏)
2013年3月10日号
「厄除けってどこが一番効くの?」
「厄除けってどこが一番効くの?」「○○大師がいいんじゃない?有名だし」喫茶店で若いママさん達が盛り上がっていた。 “困った時の神頼み”はまだまだ健在。無宗教を自称する人が増える中、たとえ困った時だけでも神仏を思い出してくれる事に嬉しくなった▼そういえば最近、身近にいるそれはそれは熱心な信仰者の存在に気づいた。娘だ。「ママおはよう!」娘達の一日がスタートする。その後も「ママご飯」「ママトイレ」「ママ抱っこ」「ママのど渇いた」「ママあそぼ」いったい一日に何回「ママ」と呼ばれるのかカウントしてみたいと思うほど。転んで泣いては「ママ痛い~」綺麗な石を見つけては「ほらママ見て!」しまいには寝言でまで「ママ…」嬉しい時も、悲しい時も、何でもない時も、とにかく「ママ」だ。その絶対的な信頼はママ信仰とも言うべきか▼しかし朝から晩まで続くママママ攻撃に「ああもう、うるさい!」となってしまうことも。初めて「ママ」と呼んでくれた頃は「はぁい」と優しく答えたのに。反省。さてそんな娘達を見ていて思い出したお言葉。「苦をば苦と悟り楽をば楽と開き、苦楽ともに思ひ合せて南無妙法蓮華経とうち唱へゐさせ給へ」(四条金吾殿御返事)▼皆様も苦しい時の次は嬉しいご報告を、そして何でもない時にこそどんどんお寺にお参り下さい。「うるさい」とは決して言わない仏様がいつでもお待ちしております。
2013年3月1日号
人間は、細菌で
人間は、細菌で広がる感染症を恐れてきた。その為病原菌撲滅の研究が続けられ、青カビから見つかったペニシリンのような抗生物質が登場した。と同時に細菌が人間の健康にも欠かせない存在で、腸内にいる100兆個の細菌が、病原菌の侵入を防いだり、免疫力を高めることを知ることになった▼外国から病原菌の侵入を防ぐ為に、動物や植物にも検疫がある。当然土の持ち込みには、厳しい規制がある。私にはインド巡礼の帰り、法華経が説かれた霊鷲山の土や石を持ち込もうとして破棄させられた苦い経験がある。逆に平成5年に生物多様条約が発効されると、土を勝手にその国の外に持ち出すことができなくなった。土の中には有用な微生物(細菌・真菌等)が潜んでいるかもしれないからだ。微生物が資源になったのだ。▼日本にはみそや醤油、漬物に代表される豊かな発酵文化もある。世界の真菌の13パーセントが日本にいるという世界有数の「菌大国」だ。ところが高齢化と過疎化でその文化も廃れつつある。菌一つにしてもよくその特性を認識し活用していくか、細菌兵器を作ろうとした時代もあった。よくよく考えるべきである▼法華経文化が華開いた日本で、法華経をどう発酵させるのか、生かすも殺すも、今の時代に生きる我々次第である。純粋性を保ちながら法華経の普遍性を外の世界に向けて、どうアピールしていくのか? 時代との対応性が求められている。(雅)