鬼面仏心
2017年7月20日号
世界、とくに北朝鮮の動向がとても心配だ。
世界、とくに北朝鮮の動向がとても心配だ。核戦争も辞さないと威嚇する姿に、昔の日本の姿が感じられてならない。北朝鮮に限らず中国や韓国、そしてロシアといった近隣諸国との関係に、これまでにない緊張と不安を感じる▼加えてトランプアメリカ大統領の誕生。戦後の日本は良くも悪くもアメリカの核の傘に守られ、平和を謳歌してきた。そんな日本にとってトランプ大統領の誕生は決して他人事ではない。こうした国際情勢に、日本は「国」としてどう対処するべきか。政治家だけでなく国民全員が真剣に考えなくてはいけない重要な問題だ▼こうした国際情勢を背景に「トランプ大統領といかにつきあうか」という内容の講座が企画された。ところがこのテーマに対し、トランプ大統領より法華経や日蓮聖人の教えを学ぶ方が大事、という声が挙がった。「学ぶ」ことは大事だ。しかし学ぶこと自体が目的化し、学んだ法華経や聖人の教えを「生きる」ことを忘れては本末転倒といえよう▼鎌倉時代、当時の蒙古の動向に国家の危機を感じ、迫害を覚悟で『立正安国論』を幕府に奏進した日蓮聖人。聖人は「国」を考えた唯一の宗教者だ。もし、いまこの時代に日蓮聖人がおられたら、どんな『立正安国論』をお書きになるだろう▼トランプ大統領や北朝鮮とどう向き合うかを学び、考え、語り合う。それが聖人の教えを受け継ぐ者の姿勢なのでは。「論語読みの論語知らず」にはならないようにしたい。(義)
2017年7月10日号
朝7時、小学校へバス通学している娘たちと
朝7時、小学校へバス通学している娘たちとバス停へ。行き先の異なる路線バスが続々とやってくるため、乗り間違えたら一大事。少々不安な娘たちに付き添っている▼そこへ別の学校に通う1年生の圭ちゃんがやってきた。普段はパパと一緒だが、その日は1人。「1人で来たの?」「もう来なくていいよって言ったんだ♪」話をしていると、挙動不審な男性が目にとまった。信号待ちの人に紛れているが、青になっても渡ることなく、時計やこちらを見てソワソワ。目深く被った帽子からチラッと見えたのは…圭ちゃんのパパ!▼心配のあまりこっそり付いてきたらしい。ある時はビルの陰に…ある時は街路樹の陰に。大人から見ればバレバレだが、圭ちゃんは全く気付かない。密かに…でも「頑張れ!」心の声はこっちまで聞こえてくるようだった▼仏さまもこんな風に私たちを見守って下さっているに違いない▼~上手くいってもいかなくても、頑張る時も頑張れない時も、あなたの幸せをただ願っていますよ~▼仏さまの慈悲の眼差しは分け隔てなく我が子(私たち)に向けられている。目に見えなくても親の愛を全身で感じて子どもは羽ばたける。私たちも仏さまが常に心を寄り添わせてくださると思えば、どんな試練も乗り越えられる▼放っておけばダンゴムシに夢中になってバスを見過ごす娘たち。そろそろ私も心を鬼に…いや仏にしてみようと思う。(蛙)
2017年7月1日号
佐伯泰英という時代小説家がいる。書き下ろしの
佐伯泰英という時代小説家がいる。書き下ろしのシリーズをいくつか抱えているが、文春文庫の『新酔いどれ小藤次』の第3巻『桜吹雪』の中で、身延山が舞台として登場してくる。最後は、菩提梯での敵役との決戦になるが、身延の宿坊に泊まり込み、亡母の供養と祖山への給仕に明け暮れ、日蓮聖人棲神の地・身延山の霊気に触れ変わっていく主人公が描かれている。百万人単位の読者に当時の身延山の姿を今に伝える好著だ。江戸時代はお伊勢参りと同様に、身延山参りは庶民の信仰を兼ねた楽しみだった▼他宗のあるお寺は修行の場であるとともに観光寺院としても有名だが、近く県や町とともに宿泊施設を作るという。旅館と宿坊の中間にあたる施設で、一般客や外国人観光客のために、英語・中国語・韓国語に対応できるサービスマンも置く。主体はその寺院ではあるが、観光系の大企業が運営にあたるそうだ。時代の流れに安閑としていられなくなったのであろうが、宗教者の1人としては全面的に是と言いがたい▼『桜吹雪』に描かれた当時の身延山の賑わいを思い起こす時、たくさんの人にお参りしてもらえるアイデアを模索することは大切なことのように思える。だがそれ以前に、菩提寺を通じての団体参拝をはじめとする身延山登詣を推進することが本筋なはずだ。祖山で体験した感動を人に伝えることから始めたい。(雅)