鬼面仏心
2023年11月20日号
■寿命の長さと中身
最近コロナのせいかペットを飼う人が増えている。安易に飼う人がいるために、飼育放棄・多頭飼育が社会問題になっている。が、確かに犬や猫はカワイイ。その犬や猫は人間より寿命が短いのでどうしてもペットロスで悲しい思いをしてしまう▼『ゾウの時間ネズミの時間』(本川達雄著)を読んだ。ほ乳類はその身体のサイズ・呼吸数・心拍数に応じて寿命が決まっているそうだ。ネズミはセカセカ心臓が鼓動を打って心拍数が多いため寿命は2年と短い。反対にゾウはゆったりと心臓が鼓動を打って心拍数が少ないため寿命が平均80年と長い▼多くの人は今すぐには死にたくないと思っているだろう。でも秦の始皇帝のように不老不死を願うわけでもない。いずれくる死を認めている。『ガリバー旅行記』に不死だが不老ではない人たちがでてくる。彼らは、死なないのに年をとってしまうので苦しむ。老いも死も認めて、その上でどうあるべきかを説くのが仏教だ▼私たちは長生きで健康でありたいと願う。しかしなかなか思い通りにはならない。大切なのは限られた寿命のなかで、いかに充実した人生を送ることができるかどうかだ。死なないなら「いのち」ではない。日蓮聖人は「いのちと申すものは一切の財の中に第一の財なり」とおっしゃっている。このいただいたかけがえのない財を輝かせていこう。 (友)
2023年11月1日号
■未熟な人類
いやあ、やっぱり良かった! …〝何が良かったの?〟だって? それは池上本門寺のお会式のこと。総門から大堂までの境内のみでの昨年の練行列が、今年は池上の夜を万灯が照らし、多くの人たちが講中に負けじと、熱い視線を向けていたからだ▼講中も参拝者もはたまた夜店目当ての者も異体同心にみんなお会式を楽しんでいた。まさしくこれがこの世の浄土だと感じた▼そんな余韻のなか法定速度50㌖の幹線道路で車を運転していると、自転車が並走していた。時速は47㌖を示しているのに、その自転車はペダルを漕がずともゆうゆうと進んでいた。ナンバープレートもなければ、ヘルメットもしていない。それが47㌖だ。別の日、同じような自転車が繁華街の狭い路地を猛スピードで走り抜けていった。しかもスマホを片手で操作しながら▼最近、パリでの電動キックボードのレンタルが禁止になった。死亡事故が発生したり、運転マナーの問題を受けたためだ。残念ながら、世の中の人たちは大小あるが未熟だ。もっというと人類自体も未熟だ。もちろん小生もそのなかに入る▼だからこそ個人、組織、国家それぞれが安穏な家庭・社会・世界へ導く努力と平和や共生共栄のメッセージを発信し啓蒙していかなければならない。日蓮宗にはそのメッセージの基となるお題目の教えがある。目指すはあの「お会式」の世界だ。