鬼面仏心
2024年2月20日号
■離諸憂悩慈心説法
立春の前、小寒・大寒と呼ばれる期間がある。最も寒さの厳しいこの時期に自己鍛錬、修行することを寒行といい、日蓮宗加行所(荒行堂)でも厳しい修行の日々が続く▼寒行といえば、うちわ太鼓を打って唱題行脚したことを想い出す。墨染めの衣、手甲脚絆に身を固め、青年会の同志たちと隊列を組んで夕闇の中を進んでいった。太鼓の響きにあわせて唱えるお題目が、道行く人びとの耳に心に届けよと、寒さも忘れて一心に唱え続けた▼家の戸口へ出て布施を喜捨してくれる人、道端に寄って掌を合わせてくれる人。こうして見知らぬ人たちとお題目をご縁として繋がりができることに胸を熱くしたものだった▼商店街では店主から「うるさい!」と、罵声を浴びせられた。しかしこれもまたご縁の1つと受け止め、臆することなく唱題を続けた。ところが「寝てる子を起こしてどうしてくれるんですか」。泣きぐずる赤ちゃんを抱いて出てきた母親には返す言葉がなかった▼法華経には、法華経・お題目を素直に信じる人だけでなく、逆に悪意をもって誹謗する人も法華経との縁を結び将来の成仏が約束されると説かれる。しかし法を説く身としては相手の立場に立って仏の慈悲心を伝えることも大切だと考えさせられた▼除夜の鐘を日中に撞かざるを得ないなどの事例を聞く昨今、どう解決すべきかが問われる。(直)