鬼面仏心

2024年4月20日号

■痛みの先に

人生の中でイヤなことは何だろうと考えてみた。もしかすると「痛み」が一番イヤなのではないだろうか。男性にとっての痛みのトップ2は痛風と腎臓結石らしい。女性は陣痛のようだ▼痛みは誰しもイヤなものだ。しかしこんな話を聞いた。「ある難病の子どもは体中の感覚が麻痺して、唯一、舌だけ感覚が残っていた。その子は舌でおろし金を舐めて、あー僕は生きているんだと感じることができた」という話だ。痛みを含めた感覚を得るというのは生きている実感ともなる▼『老人の壁』(養老孟司・南伸坊著)に「痛みを感じられない人はあまり長生きできない」とある。それは当たり前のことで、無理が分からないからだ。痛みがあるからこそ人間はブレーキをかけられる。痛みは人への注意信号だ▼世の中にムダなことはないという。イヤだイヤだと思う「痛み」だが、これが逆に大病の早期発見につながる場合もある。持病があることがかえって長生きにつながるという「一病息災」のようなものだ。また自分自身の身体の痛みを通じて、ほかの誰かの身体の「痛み」や「辛さ」に共感できるようになれるという場合もある▼さて、身体もさることながら心の部分での共感が肝心だ。そのためにお題目を唱え「いのちに合掌」して、人だけでなくすべてのものの痛みや悲しみに寄り添える人間になっていこう。(友)

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2024年4月1日号

■ユニバースに合掌

宗門が掲げる「いのちに合掌」が3年目となった。その間、新たな戦争や大災害の発生のみならず、気候変動、多様性の時代のあり方などと枚挙にいとまがなく大きく変革していく世界。今「いのちに合掌」を真剣に考えなければ生きとし生けるものが〝生きづらさ〟を感じてしまうだろう▼「いのちに合掌」の英語表記はまだ宗門で決まっていない。調べると「合掌」は英語で「put one’s palms together」などと表現するらしいが「Gassho」とし、注釈で英語を表記するのが良いかと思う。「Gassho」を英語で説明するより世界共通語を目指した方がスマートだ▼「いのち」を英語にすると「life」だが、「人生」の意味に近いため、〝生きとし生けるもの〟という意味になる「living things」もある。が、やはり三千世界を簡単に伝えるなら「universe」が一番わかりやすいかもしれない。つまり「Gassho for Universe」。訳すと「宇宙に存在するすべてに合掌」となる。そう考えると日蓮宗の「いのち」は果てしもない大きさと気づく▼小生はお題目を唱えたときに自分という個のなかにそういう世界観を感じることがある。だから「お題目=ユニバース=いのち」に「合掌」▼我々はなすすべがないから〝いのち〟を放っておいてもいいのか? そうではない。小さなことからでも行動することが今必要だ。(緑)

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