2024年3月1日
■仏さまのDNA
住職不在で荒れていた時代もあったわが寺にとって、寒修行の浄財は貴重だ。仏像を一体一体修復する費用に充てたり、トイレを順次和式から洋式に替えたり、暖房・空調器具の購入、事務機の整備、畳替えや、襖・障子の張り替えなど20年にわたり年度の目標を立てて大切に使わせてもらってきた▼今年の寒修行の最中に総代から「コピー機の買い換えが今年の目標だったが、日蓮宗新聞の報道によると、能登のお寺が大変らしい。今回は自分の寺のことより、いま困っている能登の義援金に回しましょうよ」と提案があった▼思い出したのが阪神・淡路大震災後の総代世話人会で、当時の筆頭総代が「うちのお寺は足元をしっかり見据えて、分相応、実用性重視がモットーだが、今回は良い格好をしましょう」と義援金を目標に掲げたできごとだ。良い格好をしようというのは、彼のみんなをまとめるための掛け声だった。この檀徒側から自発的に出た言動が、その通り実行されたことが、私は嬉しかった▼この2ヵ月間で良い格好をしようと呼びかけた元総代2人を霊山浄土に送った。しかしながらそのDNAは現任の総代・世話人たちに脈々と受け継がれていることを知った。喜んでことをなし、なしたことをまた喜んでいる人は幸せだなと、しみじみ思う。住職の私はいつも檀信徒に育てられている。(雅)
