オピニオン

2025年10月10日

如蓮華在水

お釈迦さまは成仏や解脱といった宗教的境地を伝えるとき、香りや味、音や光や触感といった人間の五感に響く譬えを使って説かれた。法華経の有り難さも乳味・酪味・生酥味・熟酥味・醍醐味という牛乳の5つの味の中の最上醍醐の味と説く。実に分かりやすい。では私たちはお題目の有り難さをどう伝えてきただろう?▼「日蓮聖人が有り難いと説かれた。だから有り難い」。そんな教条主義的な説明をしてこなかっただろうか。それに対して「お金が儲かる。病気が治る。だから有り難い」と説いた教団がある。有り難さの説明としては分かりやすい。しかし仏教は欲・得・楽を願う心そのものを課題とする宗教。いかに教宣拡張のためとはいえ、それはお釈迦さまや日蓮聖人の教えや精神に反する誤った信仰だ▼成仏や解脱の境地を、お釈迦さまは法華経で「如蓮華在水」とサラリと説かれた。つまり、地獄のような猛暑のなか、涼しそうに池に咲く蓮華。それが成仏や解脱の境地だと説かれたのだ。酷暑だった今年の夏。辛い暑さを経験した私たちにとって「如蓮華在水」の譬えは皮膚感覚で理解させられる境地ではないだろうか▼「唱題行」は自分のなかに咲く蓮華を感じる修行だ。猛暑のような人生。その人生を蓮華のように爽やかに、清々しく生きる。それが妙法蓮華の生き方であり、お題目を唱えて得られる有り難い境地ではと思う。 (義)

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