オピニオン

2024年7月20日

■温故知新

「頼光さんの大江山の鬼退治」というお話をご存知だろうか。かつて明治から昭和初期にかけて、国語の教科書にも掲載された有名なお話だ。子ども向けの絵本もあったし、童謡にも歌われていた。主人公の源頼光という武将は実在の人で、多田源氏の祖・満仲の長男である。大江山から夜な夜な都に出てきては荒らし回る酒呑童子という鬼を見事討ち取ったのが頼光さんだ▼しかし英雄源頼光の名も、その武勇伝も今や知る人は少ない。ただ、主人頼光は知らなくても、その家来の坂田金時は金太郎さんとして今も親しまれ語り継がれている。頼光さんは苦笑いしているかもしれない。このような過去の言い伝え、あるいは歴史を動かす重大な出来事でも、継承されず一度途切れてしまうと容易には修復できない▼ところが過去の出来事の記録を削除している国があると聞く。政権を握る人にとって都合の悪いことはなかったことにしようとする思惑が見える。もし事実ならとんでもないことだ▼都合の悪いことや失敗などの嫌なことも、過去を知ることによって同じ過ちを繰り返すことなく、より良い未来に向かって方向を定めることができる。歴史の継承とは未来という宝物を磨き上げることである。逆に過去を抹消するとは、光り輝く未来を否定する行為というほかない。憂えているのは頼光さんだけではあるまい。(直)

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