2023年9月10日
■瞋恚からの脱却を
心が萎えそうになることはだれにもある。辛いことや厭な目にあったとき、心の中には瞋りの念が湧いてくる。なぜ自分がこんな目に遭わなくてはならないのかという思いが、やがてその原因となった事物に対する瞋りとなっていく▼たとえば蜂に刺されたとき、蜂そのものへの瞋りと同時に、蜂がいるとなぜ教えてくれなかったのか。さらにそれが寺の境内のことなら、管理者として蜂を駆除する義務があるのに、どうしてくれるんだ。などと瞋りの炎が燃え広がっていく▼自分の不注意で柱に頭をぶつけても、誰かを恨み瞋りの対象を求めるのが我々だ。瞋り(瞋恚)は但行礼拝合掌の心の対極であり、これを克服することが仏道修行として課せられる。瞋りの対象が人間である場合は蜂や柱どころではない。報復して敵に思い知らせてやりたい。この思いがついには国家間の戦争となる。しかし私たちの本当の敵は相手国ではない。自らの心に巣くう憎悪・瞋恚に他ならないのだ▼世界を取り巻く環境は悪化の一途をたどっている。異常気象、広範囲の山火事など。地球の温暖化に起因するといわれながらその対策は進まず、今も互いに傷つけ合うことに執着している▼温暖化現象は、すべての生命の根源である母なる大地、地球からの緊急メッセージだ。「いのちに合掌」。今すぐ瞋りの連鎖を断ちきらねばならない。 (直)