お知らせ
2023年8月1日号
■いいお別れ
60年前、エレキギターを持つだけで不良と呼ばれた時代があった。その時、練習場所を求めて寺の納骨堂に集まった5人組は少し世間を斜めに見ていたかもしれない▼その仲間の1人から電話があった。ステージ4で抗ガン剤治療中だという。彼は続いて、ほかのメンバーからの「病気には気合いだ。ロック魂で闘え!」という電話やメールでのメッセージを止めてほしいと懇願した。問題児を説き伏せたことを彼に知らせようとしたが電話がつながらない。1週間後、亡くなったという連絡があった▼困惑したのは、本人と遺族の希望で私に葬儀をという依頼があったことだ。彼は宗教を全く信じない、頼りにしないと広言していた。僧侶になった私とは話が合わず、20年来疎遠になっていた。彼の菩提寺は日蓮宗で、遺族・菩提寺・私の3者で協議し、通夜と説教は幼なじみの私が、葬儀と七七忌は菩提寺の住職が、初七日から六七日まで私が遺骨を預かることになった。「なぜ七七日が必要なんですか」という遺族には、この期間がお別れのための大事な時間であることを説いた▼40日の間、仏さまやいのちのこと、人生について彼に語り続けた。遺族も毎週、彼に会いに来た。菩提寺での七七忌のために遺骨を引き取りに来た遺族の「いいお別れができました」の声を聞いたとき、照れ笑いする友の顔が浮かんだ。 (雅)