お知らせ
2023年7月1日号
■紡ぎ合ういのち
ツバメが巣を作るとその家に幸運がやって来ると、亡き祖母が喜んだものだ。なるほど、巣から顔をのぞかせているヒナが一斉に大きな口を開けて親ツバメを迎えるところは観ていて幸福な気持ちになる▼今、我が家にはツバメの巣がない。いつの頃からかツバメが巣を作り始めるとカラスが壊しにやって来るようになった。ツバメは懲りずにまた巣を作り始めるが、杉の巨木から見下ろしているカラスがまた壊しに来るのである▼ツバメがカラスの猟場を荒らしている様子もない。ツバメ保護の策を検討したが、ずっと監視するわけにもいかず、結局ツバメたちは別の家に行ってしまい、慈悲のかけらもない理不尽なカラスへの憤りが我が家には残った▼翻って、カラスが我々人間を眺めたとき、どう思うだろうか。カラスはツバメを追い払いはしたが、仲間同士の殺し合いや、まして次世代を担う子どもを殺害することなどはあるまい。対するに人間はどうだろう。食べるためのみならず、互いの体面・威信、利欲のために他を貶めたり時には殺生に及ぶ。あまつさえ我が子の尊い命を奪うことさえある▼昨今の凶悪な事件、世情を見るにつけ、人の世が長く続かないのではないかとの不安に駆られる。いのちとは独り自身のものだけではない。互いのいのちを紡ぎ合い、より豊かな世界の実現を祈ろう。いのちに合掌!(直)