2022年12月1日
■いのちを伝える
日蓮宗の布教方針は「いのちに合掌」だ。7年前、小学校からいのちをテーマに講演依頼がきた。救急救命士、医師、そして僧侶。さまざまな職業から違った視点で「いのち」を語ってもらうという学校側の説明があった▼はじめに生徒から「死んだ人を担当する人が、なぜ生きている僕らに話しに来たの?」という質問がきた。講演は大人相手より純粋な子ども対象の方が難しい。この日は給食前の「いただきます」には「あなたのいのちをいただきます」という食べ物への感謝があるという話をしたが、いまひとつの反応だったことを反省した▼今年改めて小中学校で講演する機会に恵まれた。コロナ差別がメインテーマだが、いのちの尊さを本当に痛感するのは、生きるか死ぬかという時だ。だから「生死」をしっかり伝えなければと決めた▼生老病死をサブテーマにし、生まれてくること、老いること、病むこと、死ぬこと、すべてがいのちの現れだということや、久遠の仏さまを念頭に死んでも終わらない「いのち」の話をした。時空を広げて環境問題までもが、いのちの連環だと説明した▼講演後、「私のいのちの中に、みんなのいのちが生きていることに気づいた」という感想文をもらった。周りの人への感謝はあっても目の前から消えてしまったものへ感謝することはあまりないかもしれない。久遠のいのちを伝えたい。(雅)