2022年8月20日
■忘れる・忘れない
昔、国会の証人で「記憶にございません」と言う人がいた。人の脳は寝ると75㌫を忘れてしまうそうだ。学生の頃、試験の前日になると忘れるのが怖くて徹夜で勉強して寝ずにテストを受けたものだ。しかし最近、年のせいか忘れまくっている。3歩歩くと何をしようとしたのか忘れている▼忘れるというのは良いこともある。悪いこと・悲しいこと・辛いことは忘れることで救われることもある。ただ教訓となるようなことは、「その次」に備えて、忘れたり風化させたりしてはいけない▼日蓮聖人は世界一の忘れん坊を紹介している。シュリハンドクというお釈迦さまのお弟子だ。彼は自分の名前すら忘れる。お経も忘れる。そんな自分を悲観し、お坊さんをやめようとした時、お釈迦さまから箒を渡され「ちりを払い、垢を除きなさい」と言われた。なぜか彼はお釈迦さまのお言葉だけは忘れなかった。長年、掃除だけを続けてやがて気が付いた。「ちりを払い、垢を除くのは周囲だけでなく自分の心もだ」と▼長い歳月をかけてたどり着いた悟りだった。シュリハンドクはこの悟りをずっと忘れずにいたという。どんな忘れん坊も信念となったものを忘れることはない。私たちが生活する中で、つい忘れてしまうこともたくさんある。その多くはたいしたものではないかも。全部忘れまいとは思わず、気楽になってみよう。(友)