2022年7月1日
■渡る世間を…
役場の人権課から小中学校を巡回する人権講演の依頼があった。この講演は平成30年に始まり、初回は障がい者の立場でシンガーソングライターが、次は外国人の視点で大学教授が日本人との認識の違いをテーマにした。私は「コロナ・差別・気づき」について子どもたちに語りかけようと思っている▼ことの発端は1年前に地元の高校生と共同制作した人権啓発ポスターだった。コロナ禍で失われたものは何だったか。地域社会の崩壊、「絆」という言葉が浮上し、それを分断していくコロナ。それをどう結び直していくのかを一緒に考えた。「コロナ大逆転物語」のコピーは高校生が考えた。次は小中学生に…ということになったのだ▼引き受けるにあたり、僧服で講演させてもらうようにお願いした。法華経の中の常不軽菩薩に通じる詩を紹介するからだ。「ぼくは祈る ぼくに意地悪する人が 自分の中の優しさに気づきますように ぼくは祈る その人のしあわせのために」。いじめを受けている少年が作った詩だ。仲良しの友のために祈ることはできる。いじめを仕掛ける人を祈るのは難しい。その人の気づきを祈ることができたとしても、幸せまで祈ることはさらに難しい▼渡る世間は鬼ばかりだと思った時、自分も鬼になっているかもしれない。自分含め渡る世間を仏ばかりにすることが日蓮宗徒の役割だ。(雅)