オピニオン

2022年4月1日

■日常の1秒さえ

春の選抜高校野球大会で倉敷工(岡山)の福島貫太主将が選手宣誓をした。当たり前だった日常が失われるなか、それでも少しずつ前に進み、多くの人に支えられて甲子園という夢の舞台に立てた喜びを言葉にした。そこには3度の感謝が繰り返され、象徴的な宣誓となった。戦争、自然災害、コロナ。幾多の困難と悲しみを目にし、普通の日常がありがたいことを私たちは知った▼東日本大震災から11年が経ち、海岸には巨大な防潮堤が築かれた。更地のままの土地がまだまだ残るが、町には人びとの営みが戻りつつある。しかし11年が経っても犠牲となった人たちへの悲しみが消えることはない。たくさんの人の命日であり、それぞれに人生物語があった。想像を絶する恐怖と悲しみを経験し、癒えることのない寂しさと後悔。決して他人事ではない▼世界中で困難に遭い、辛い思いをしている人たちがいる。が、再び立ち上がり、命をつないできたのも人間だ。私たちは、惨劇から目をそらさず、忘れず、未来へ教訓としてつなぎ、これからを生きる子どもたちが、幸せな未来を思い描き、夢を実現できる世の中にする使命がある。当たり前の日常を持続させることが、平和な未来を作っていく▼福島選手は力強く誓う。「夢や志を持ち続け、1日、1分、1秒を大切に歩む」と。それが生きるということであり、共生ともなる。  (福)

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