2020年6月10日
■本質を見抜く力
作曲家の仕事の様子をテレビで紹介していた。いつもその作曲家は悩んだ末に突然メロディが浮かび、音符が降り注ぐように落ちてくるのだと言っていた。耳には外から入る音をもとに、聴覚が新たに音を作り出す機能があるらしい。雑音でかき消された言葉を脳が想像して補うというのだ。例えばド、ミという音を聞くと耳の奥でソが鳴るという実験結果がある▼コラム子の好きな曲に「みだれ髪」(美空ひばり)がある。レコーディングのとき、ひばりさんは1ヵ所音を上げずに歌った。作曲した船村徹さんが最後まで上げるか、下げるか迷った箇所だった。その箇所が頭の中で違和感の鐘が別の音を鳴らしたのだろう▼奈良の刀匠河内國平氏は、「刀鍛冶はとかく注目されることが多いが、数多く作刀した中からいいものを選べばいい。しかし包丁などを作る野鍛冶は数多く作ったうえに、過酷な使用条件に晒される。それで刃こぼれでもすれば、一発で信用を失う。こっちの方が本当は偉い」と。一流は物事の本質を知るという。本質を見抜くことは容易ではない。気付かずに済むことの方が多いだろう。間違った情報、批難ばかりが多く飛び交う閉塞感の強いいま、「こころを柔軟」にして前を向こう▼〽一人じゃないから、キミが私を守るから(歌手AIの「Story」)、の歌詞が浮かぶ。聞こえてくるはずだ。トンツク、トントンと。(汲)