2020年5月1日
ハグより合掌
台風被害の時、電気や水道などが止まり、日常生活に破綻を来したことがある。精神的にも肉体的にも辛いものだった。今回のコロナ禍では、ライフラインは正常であるが、精神的圧迫を受ける毎日となった。目に見えないウイルスが相手である。その影響で、春彼岸会が中止や無参列になったお寺も多いと聞く。宗教者は祈ることしかできないのか?▼日蓮聖人は天変地異、飢饉疫病などのひろがりを、信仰のあり方と深く関わらせながら解釈している。しかし、現代においてはどうなのか? 苦悶している時、ヒントをくれた人がいた。102歳の檀家さんだ▼「来年まで命があるかどうかわからん。ご先祖さまの供養だけはさせてくれまいか」。彼女の彼岸会参列を必死で断った。法要後、付け届けをしてくれた人には直接に、そうでない人には郵送したものがある。かつてインフルエンザを「流感(流行性感冒)と呼ばれた時の御札「感冒除守」を表に、裏にマスクを添えて「精神世界の感冒除守と、現実世界のマスクで、表裏一体となってお寺は皆さまの安穏を祈ります」とメッセージ付きで配った▼102歳のお宅に持参すると「お寺さんは祈ってくれたらそれで良い。形があって、もっと良い」と拝んでくれた。「コロナの時はハグより合掌だよ。直接触れずとも、心でつながればね」と拝み返した。(雅)
