2017年9月10日
15年ほど前のこと。お彼岸のお経に
15年ほど前のこと。お彼岸のお経に伺ったお宅でお婆ちゃんがおはぎを出してくれた。お皿にはハンバーグのような大きなおはぎが2つ。私は躊躇った。ご飯でもお餅でもないあの食感が苦手だったのだ。しかしせっかくの手作り…勇気を出して箸を持ち、お茶で流し込むようにして一気に頂いた。それを見たお婆ちゃん「そんなにお好きなら♪」と、なんとお代わりを持ってきてくれた。もちろん2つ。再びお茶の力を借りて、合計4個のおはぎをどうにか完食したのだった▼これがきっかけとなり、徐々におはぎが食べられるようになった私。いつしかお婆ちゃんのおはぎの大ファンになり、毎年お彼岸に伺うのを楽しみにしていた▼だが今年、そんな打ち明け話もできないまま、お婆ちゃんは霊山浄土へ旅立ってしまった。実は大きな病気を抱えていたお婆ちゃん。その細い体で長い時間台所に立つのも難儀だったと思う。お彼岸には「おかげさまで今年も作ることができましたよ。」仏様へ感謝の気持ちを込めておはぎをお供えしていたにちがいない▼お婆ちゃんの初盆に伺った住職がお土産を抱えて帰ってきた。包みを開けると大きなおはぎがずらり。お婆ちゃんの味とその心は、しっかりと娘さんに受け継がれていた。「この七日のうちに一善の小行を修せば、必ず仏果菩提を得べし」。次のお彼岸もまたあの優しい味に会えるかもしれない。(蛙)