2017年9月1日
詩集『くじけないで』で有名になった
詩集『くじけないで』で有名になった柴田トヨさんは、90歳から詩を書きだした。96歳の私という詩の中で、「なにを考えてるの?」とヘルパーさんに聞かれて、柴田さんがちょっと困ったという一節がある。そのとき彼女は「今の世の中まちがっている、正さねば」と考えていたのだ。96歳になっても、世の中のことを考えていたかと、妙に感心した私▼98歳で、月に1度お寺参りを続けている女性がいる。私も月に3度は顔を見に行く。体調を気にして、お盆や彼岸の供養を前もって預かることが増えた。「あの世への貯金」が口ぐせだ。先日、空を見上げている彼女に「何をしているの?」と声をかけた。すぐに「どこかのミサイルが飛んでくるかもしれんとテレビで言ってた。争いが収まったらいいなぁとお願いしていたところよ」と返ってきた。「この人も世の中のことを考えていたのか。年を重ねても、前向きでいられる人を若いというのだろうなぁ」と感じた▼「日蓮さんは幾つで死んだの」と聞かれたので「60歳だよ」と答えると「もったいないねぇ。まだまだ世の中でしたいことがたくさんあったろうにねぇ」ときた。「エーッ」と思ったが、旦那さんは硫黄島で戦死している。この人の懐いは本物だ。確かに日蓮聖人が80歳まで生きていたなら、世の中はどう変わっていたか。見てみたいのは私だけではあるまい。(雅)