2016年12月10日
師走を迎え、何かと忙しいのに加え
師走を迎え、何かと忙しいのに加え、頭から離れないものに年賀状がある。年賀状の発行枚数が年々減少しているといわれて久しい。人口の減少、付き合い方や慣習に対する考え方の変化などの要因はあるが、インターネットの普及によるところが最も大きいのだろう▼作家の池波正太郎は手書きの年賀状にこだわった。宛名も本文も自分で書いていたという。そのために夏から書き始めていたらしい。一人ひとりの顔を思い浮かべながら丁寧に書いたのだろう。それは文字という形に心を込める作業ともいえよう▼佐藤初女(はつめ)さんが主宰する悩みを抱えた人の憩いの場、青森県の岩木山麓にある「森のイスキア」に、自殺を考えていた青年が来たとき、お土産におむすびを持たせようとした。ラップで巻くとご飯は窒息しふやけるので、タオルに包んで手渡すと、青年は「ここまで大事にしてくれるのか」と感激して自殺を思い留まった。佐藤さんのおむすびは絶品で、口の中で自然にほぐれていくという。することに心を込めると、思いは伝わるのだろう▼お祖師様は紙が貴重な時代にあっても、一人ひとりに心を込めた手紙を出されていた。どれほど相手のことを思われて手紙を書かれたのであろうか。これから年賀状を書く身としては、例年にも増して相手の顔を思い浮かべ、安穏の祈りを込めて書こうと思う。勿論、毛筆での手書きです。(汲)
