2013年7月20日
未曾有の東日本大震災によって
未曾有の東日本大震災によって起こった原発事故。事故当時、東京電力福島第一原子力発電所所長であった吉田昌郎さんが亡くなった。食道ガンであったという。前代未聞の状況下、陣頭指揮を執り続けた吉田元所長は、時には本店に背き、場合によっては政府関係者に背いて、原子炉に注水を続けたことがのちに分かった。その判断が正しかったと評価されたのは、病に倒れたあとだった▼のちに吉田元所長は事故当時の心境を「部下には、地面から菩薩が湧くイメージを地獄のような状態の中で感じた」と語っている。背中に向かって合掌したという部下たちの姿は、法華経に説かれる地涌の菩薩そのものだったのであろう▼原子力はクリーンで安全なエネルギーとして日本各地に原子炉が建設されてきた。福井には「普賢」と「文殊」と名付けられた原子炉がある。菩薩名を冠することで、安全を祈念したかったのだろうか。吉田元所長が部下の背に見た菩薩像。共に大きな祈りと救いが託されている▼歴史的な猛暑が予測されている今夏、日本中で節電が呼びかけられている。私たちはエネルギー問題を、そしてこの便利で快適な生活をどのように考えれば良いのだろう。なくてはならない電力。あって当たり前の現在の生活。吉田元所長の悲報を受け、私たちを救済してくれる地涌の菩薩から大きな宿題をもらったようである(奏)