2019年11月20日
◆思い込み
カナリヤが水を飲んでいるのを見た幼子が「トリさんうがいしてるよ、風邪早く治るといいね」と言ったとか。口の周りの筋肉が弱いトリは上を向いて水を流し込む。カナリヤを見てうがいと勘違いしたとはいえ、この子の心の優しさには打たれるものがある▼上を向くと言えば、鶏は上を向いて口を大きくあけコケコッコーと時を告げる。江戸小咄に退屈をもてあました年寄りの話がある。退屈で大きな欠伸をしていたが、鶏が時を告げているのが目に入った。歳のせいで鳴き声が聞こえない年寄りは「鶏も退屈なんじゃろなあ。欠伸しとる」とつぶやいたとか▼ともすれば私たちは周りの物事を自分の尺度で測りがちだ。トリの行動をとり違えるくらいなら他に影響を及ぼすほどでもない。しかしこれが一国を動かす人物、あるいは自治体や会社など組織の運営に関わる人たちとなると笑い話ではすまない。組織を船にたとえるならば、狭量な視野に立ち、その場のウケや思いつきで舵取りされては取り返しがつかない事態となるかもしれないのである▼様々な組織の舵取り役に就いている人にはしっかり自覚してもらいたい。と同時に、その船に乗っている私たちも適正に船が進んでいるかを確認する役目があることを心せねばならない。そして何より忘れてならないのは、わが日蓮宗も組織の1つであるということだ。(直)