2013年12月10日
「三秒間ルールだから大丈夫だよ」と
「三秒間ルールだから大丈夫だよ」と娘に言われたことを思い出した。小学6年の時だから、もう12年も前のことだ。食べ物を床に落としても、三秒間のうちに拾って食べれば汚くないという。子どもたちの間で言われている都市伝説らしい。食物に限らず、あらゆるものを大切にすることに繋がるのではと、「なるほど」と感心したものだ▼本阿弥光悦は清貧の人として知られているが、それは光悦の母、妙秀の教えによるものである。妙秀は「慳貪にして富裕なることを嫌った」(『清貧の思想』中野孝次著)という。それは徹底していたようだ。慳貪とは欲深く慈しみの心がないこと。つまり貪欲で、自分さえよければ他人はどうでもいいと思う者のことである。妙秀が重んじたのは何より人の心のありようと、物欲を持たないことであった。その時代の富裕者は非人情なことをする者も多く、許せなかったのだろう。それを体現するかのように、90歳で唱題のうちに臨終を迎えるが、残ったものは単物一枚、袷の帷子二枚、浴衣、紙子の夜着、木綿の蒲団、布の枕だけで、あとは何もなかったのだ。他の物はその都度、人に分けていたのだという。「欲少なく、足るを知る」人生だった▼「知っていますか?子供たちが将来使う資源を、私たちがいま、使っていることを」「僕の分は?」(ACジャパン)「もうないの?」そんなことばを言わせてはならない。(汲)