日蓮宗新聞

2025年8月1日号

沖縄・広島・知覧で慰霊と平和を願うお題目響く

日蓮宗内では終戦80年を受けて、沖縄・広島・知覧などで慰霊と平和を願う法要を営みました。今後、千鳥ヶ淵戦没者墓苑と長崎などでも法要が営まれる予定です。法要は慰霊や平和を願うとともに、私たちが平和を築き上げていくという誓いを確認する場ともなります。日蓮宗はこの先、何年経っても法要を続けていきます。

■沖 縄

沖縄① 太平洋戦争時に沖縄での組織的戦闘が終結した6月23日(沖縄県制定の「慰霊の日」)、同県那覇市法華経寺で沖縄戦80年立正平和祈念慰霊法要が田中恵紳宗務総長を導師に営まれた。同法要と糸満市福地から同市摩文仁の平和祈念公園までの約5㌔の行脚は、法華経寺・全国日蓮宗青年会(以下「全日青」)・日蓮宗宗務院の共催と全日本仏教青年会(以下=全日仏青)・WFBY世界仏教徒青年連盟(以下「WFBY」)の協力で行われ、宗派を超えて慰霊のお題目を響かせた。

沖縄② 全日青の僧侶と全日仏青ら他宗の僧侶、法華経寺の檀信徒ら約200人の行脚隊は、沖縄の厳しい日差しのもとお題目を唱えながら福地の琉球ガラス村を出発。慰霊碑の1つ「魂魄の塔」に到着した一行は田中総長からの激励とお題目旗2本を受け取り、平和祈念公園内の平和の丘を目指し、再び歩を進めた。途中、ひめゆりの塔や黎明の塔などでも読経とお題目を捧げた。「沖縄全戦没者追悼式」開式前の平和の丘では法華経寺住職の伊東政浩師を導師に全員で自我偈とお題目を響かせた。最後に伊東住職は追悼式参加者に向け同追悼式が始まる1962年に先立つ60年から慰霊行脚を行っていることを告げ、謝意を表した。全日青の立正平和委員長の伊東常行師は、「10年後は戦争経験者がいなくなり、慰霊碑も忘れられていくのではないかと危惧している。そうならないためにも青年僧が〝戦争〟を伝え続けていくことを戦没者にあらためて誓いを立てる行脚にもなった」と話した。
沖縄③ 法要は、青年僧で埋め尽くされた法華経寺本堂で営まれた。沖縄戦の激戦地の1つシュガーローフに建つ同寺に読経と唱題が響いた後、田中総長が「未だ苦を離れざる者をば願わくは苦を離れしめん 未だ楽を得ざる者には願わくは楽を得せしめん」と回向した。また挨拶に立ち、「沖縄戦の歴史を見てこの凄惨な悲劇を決して繰り返してはならないと誰もが語るが、日本国内の約7割の米軍専用施設が沖縄に集中し、国際情勢の緊張の高まりを背景に自衛隊の新たな部隊配備や装備強化が進められ、今もなお〝防衛の最前線〟とされている現実に私たちは真摯に向き合わなければならない」とし、悲しみの象徴だけではなく、勇気や祈り、未来への希望などの歴史の光と影を知り、伝えていくことの重要性を訴えた。そして最後に「先人たちの尊い犠牲の上に今があることに深く感謝申し上げ、戦没者諸霊の安らぎと世界の恒久平和を」と願った。
全日青の工藤堯顯会長は「今日唱えたお題目により戦没者の慰霊と世界の平和に近づいたと思う。今後の90年、100年と青年僧につなぎ、慰霊を続けてほしい」と話した。全日仏青の新井順證理事長は「祈りが合流することは美しいこと」とこの先、200年と続いていくことを期待した。WFBYの村山博雅会長は「続けられる行脚は尊い菩薩行。これより先の戦争に向かう国際情勢のなかで恒久平和を実現する大きな力」と称えた。
謝辞で宮崎・鹿児島・沖縄県宗務所長の黒木浩順師は「〝いのちに合掌〟を掲げる日蓮宗はいのちの尊さを伝える使命がある。絶えることのない祈りを」と要望した。伊東住職は「先日、今まで沖縄慰霊に来たくてもご縁がなく来れなかった80歳の僧侶とアブチラガマ(ガマ=洞窟・南城市)に入った。光も入らないなかで何百人と負傷兵が収容され、そこで腕や足を切った話など強烈な話を聞く度にますますお題目が必要なんだと互いに慰霊の念を強くした。次の90年はほとんど戦争経験者がいなくなるため大事になる。伝えていくのは私たち。戦争の事実を知ってほしい」と訴え、訪沖を呼びかけた。

広 島

広島④ 広島県管区の僧侶檀信徒からなる広島県護法会は6月30日、広島市本山國前寺で「終戦80年 広島原爆死没者追善供養 立正安国世界平和祈願法要」を営んだ。
同寺は原爆投下当時、被爆者の避難や救護場所になった。今も爆風で吹き飛ばされたガラス片が突き刺さった梁がある本堂で、田中恵紳宗務総長を導師に疋田日量貫首をはじめ、管内僧侶檀信徒約270人が犠牲者への供養と平和への祈りを捧げた。

法要に先立ち福山市妙法寺檀徒・廣中正樹さんの被爆体験「父子のわかれ」を参列者は聞いた。廣中さんは1945年8月6日の広島への原爆投下時5歳で、爆心地から西へ約3・5㌔離れた己斐町で被爆した。廣中さんの父は、現在の原爆ドームの近くの通勤電車のなかで被爆し、頭から背中までの火傷とガラス片がたくさん刺さった状態で家にたどりついたが、翌日の午後に亡くなったという。廣中さんは父との別れが辛くて悲しいものだったと涙しながら、今もたくさんの火傷を負った人たちなどの悲惨な状況が忘れられないと話し、最後に「国にとって、父は何十万人のうちの1人かもしれないが、私たちにとって父はすべてだった。2度と戦争を繰り返さずに核兵器も作らず、命を大切にして平和な社会を築いてほしい」と訴えた。
法要は広島法華和讃会が奉唱する新和讃で幕を開けた。「広島に被災なされし、人びとのみ魂に捧げし、追善の誠。故郷を思いし、み魂に誓いしは平和の願いを後に伝えん。みな共に唱えひろめるお題目、立正安国、宗祖の願い」と声と太鼓を揃え、心を1つにした。読経・咒讃鐃鈸・対揚に続き田中総長がご宝前に立ち、「人類史上初の原子爆弾がこの地に炸裂し、人びとの肌を焼き、爆風は万物を破砕し、放射能は身の内を蝕む。翡翠の河は赤き血汐に染まり、紺碧の空は黒き雨に覆われる。まさに地獄と化し、犠牲者は十数万となる」と嘆いた後、「釈尊は法華経を説き、共生世界の実現こそ真の姿と示し給う」と平和の世界に向かって尽くすことを誓い、全員でお題目を捧げた。また田中総長は挨拶で「世界で唯一の被爆体験を持つ私たち日本人は、経験と平和への思いを受け継ぎ、新たな被爆者を生み出さないよう、核兵器の非人道性と戦争の惨禍を後世に伝え続けていく責務を担っている。1人ひとりが平和への礎になることを」と訴えた。
和讃を唱えた和讃会副会長の難波妙水さんは「今の日本の平和に感謝している。和讃を通して仏の道=平和の大切さをずっと歌い続け、願い続け、伝え続けていきたい」と話した。
法要後は田中総長らが平和記念公園を訪れ、原爆で犠牲となり身元不明の遺骨約7万柱が納められる原爆供養塔と広島平和都市記念碑(原爆死没者慰霊碑)で献華し、法味を捧げた。

知 覧

知覧行脚80年前、鹿児島県南九州市知覧から最後の特攻機が飛び立った日にあたる7月19日、宮崎鹿児島沖縄県管区青年会は同地で行脚を行い、慰霊のお題目を響かせた。太平洋戦争末期、日本軍の捨て身の手段となった軍用機、小型艇、潜水艇による特別攻撃での戦死者は海軍4146人、陸軍2225人の計6371人にのぼり、最年少は17歳だった。知覧には陸軍の基地があり、ここから出発した出撃者のうち439人が命を落とした。
当日は同会の田平光鵬会長をはじめ全国日蓮宗青年会長の工藤堯顯師ら約40人の青年僧が、特攻隊員の世話をしたことから「特攻の母」と呼ばれた鳥濱トメさんが営んでいた富屋食堂前から出発。特攻隊の慰霊のために建てられた石灯籠が並ぶ約3㌔の道を唱題行脚した。目的地の特攻平和観音堂で自我偈を読誦した後、お題目で慰霊の誠を捧げた。

また鹿児島市教王寺で終戦80年知覧特攻隊慰霊法要が営まれた。知覧特攻平和会館で特攻隊員の手紙や遺品を見学した青年僧が再び想いを手向け、慰霊のお経とお題目を唱えた。参列した宗務院の長谷川雄一伝道部長と同管区の黒木浩順所長はともに、「若い力で〝いのちに合掌〟する立正安国の顕現を」と青年僧を激励した。また導師を務めた田平会長は「会館で特攻によって命を落とした若い人たちの遺書などを読むと当時の心境が伝わってくる。もっと多くの人たちに想いを知っていただき、語り継いでいくことで平和を守っていくことも供養になる。そのためにも今後も行脚を続けたい」と話した。

illust-hitokuchi

side-niceshot-ttl

写真 2023-01-13 9 02 09

新年のご挨拶。

過去の写真を見る

全国の通信記事

  • 北海道教区
  • 東北教区
  • 北陸教区
  • 北関東教区
  • 北関東教区
  • 千葉教区
  • 京浜教区
  • 山静教区
  • 中部教区
  • 近畿教区
  • 中四国教区
  • 九州教区

ご覧になりたい
教区をクリック
してください

side-report-area01 side-report-area02 side-report-area03 side-report-area04 side-report-area05 side-report-area06 side-report-area07 side-report-area08 side-report-area09 side-report-area10 side-report-area11_off side-report-area12
ひとくち説法
論説
鬼面仏心
購読案内

信行品揃ってます!

日蓮宗新聞社の
ウェブショップ

ウェブショップ
">天野喜孝作 法華経画 グッズショップ
">取扱品目録
日蓮宗のお店のご案内
">電子版日蓮宗新聞試読のご登録
">電子版日蓮宗新聞のご登録
日蓮宗新聞・教誌「正法」電子書籍 試読・購入はこちら

2025年

2024年

2023年

2022年

2021年

2020年

2019年

2018年

2017年

2016年

2015年

2014年

2013年

2012年

2011年

2010年

2009年

2008年

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

書籍の取り扱い

前へ 次へ
  • 名句で読む「立正安国論」

    中尾堯著
    日蓮宗新聞社
    定価 1,365円

  • 日蓮聖人―その生涯と教え―

    日蓮宗新聞社編
    日蓮宗新聞社
    定価 826円+税

書評
正法
side-bnr07
side-bnr07