日蓮宗新聞
2023年12月1日号
ジャカルタ蓮華寺落慶法要
日蓮宗国際布教拠点インドネシア・ジャカルタ蓮華寺(エルフィナ・妙布主任)の落慶法要が12月3日に営まれた。2003年、オフィスの小さな仏壇から産声をあげ、7度の移転を経て地上5階建の大輪の華を咲かせた蓮華寺を、導師を務めた及川日周師(京都市大本山妙顯寺貫首)、同寺や東南アジアなどのメンバー(信徒)、日本からの参列者約150人が祝った。
2018年に建立された建物の内部は1階がホールや事務所、2・3階が吹き抜けの本堂、4階はヨガやワークショップなどを行う多目的室、5階が庫裡。本堂の仏像や須弥壇、前机などは日本の寺院のものとまったく同じだが、驚くべきことに来日したことがないインドネシアの職人が写真だけを頼りに再現したという。落慶法要は20年に予定されていたが、コロナ禍のため延期されていた。
法要前、当日が誕生日と重なったエルフィナ師は、メンバーから「センセイ。ハッピーバースデイ!」と家族のように祝福を受けた。日本からの僧侶の雅楽の演奏や修法、声明、現地子どもたちの献菓など、法要は厳かかつ華やかに行われた。及川師は挨拶で「日蓮聖人の願いの1つが叶いました」とエルフィナ師とメンバーの殊勲を讃えた。
同寺のアムリ・ナディマン理事長は「賃貸時は契約が切れると拠点を探さなければならなくみんないつも不安でした。これからはずっとこの場所にあるので安心でき、布教や仏教の勉強に集中できます。今後は小学校と協力し、仏教を学ぶ場所として地域に貢献したい」と期待を寄せた。
設立時は同寺の信徒で、大学で医学を専攻していたエルフィナ師は発心して11年に日蓮宗僧侶(教師)になった。「当時から本当に大変なことがたくさんありましたが、お題目を唱えるといろんな人たちが助けてくれ、少しずつ良くなっていきました。私と同じように悩んでいるたくさんの人を救っていきたい」と抱負を語った。現在、蓮華寺ではコロナ禍が始まってから、生活が苦しい人たちのために毎週炊き出しを行っている。この活動により、手伝いを望む人たちが後を絶たないため、布施の精神が広がっているという。エルフィナ師は、「みんなが平等であるという法華経の教えを生活のなかで実践していく。その発信の拠点にしたい」と笑顔を見せた。
蓮華寺の表の壁面には大きく「Graha・Pundarika」と書かれている。訳すと「蓮華の家」。みんなが家族になれるよう。そう願われている。
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全国日蓮宗青年会は蓮華寺での法要出仕に合わせて、カレーの炊き出しやメンバーとの交流、地域への「こぞうくんのみのぶまんじゅう」の供養を行った。
57箇本山めぐり満了証授与式
日蓮宗全国本山会(総裁=内野日総総本山身延山久遠寺法主猊下、会長=井上日修本山瑞輪寺貫首)企画監修の「全国五十七箇本山御朱印めぐり」満了証授与式(第5回)が11月17日、山梨県身延山久遠寺で行われ、満願した31人が出席した。井上会長から1人ひとりに満了証が授与されると、参加者に笑顔が広がった。
井上会長は参加者に対し、「北は宮城、南は佐賀まである日蓮宗の本山をめぐるのは大変なご苦労だったと思います。奇特であり、まさに日蓮宗の信仰、信徒の鑑です。皆さまを筆頭に本山めぐりをされる人たちが増えれば、日蓮宗も栄えていくと確信しました」と讃えた。
千葉県から参加したYMさん(39)は、亡くなった父・Tさんのあとを受け継いで満願を果たした。Tさんは2018年開催の同じ満了証授与式に出席した後、2回目の満願を目指し本山めぐりを開始したが、2019年に志半ばで逝去した。昨年11月にMさんは、Tさんが回れなかった本山の参拝を含め、今年3月までの約5ヵ月間で57本山の参拝を達成した。「父親もこの場所をめぐったのだなと感じながら参拝しました。また自分自身の内面と向き合うためにも始めた本山めぐりで、心があらたまり、前向きな気持ちで溢れました。もう一度参拝したいです」と安堵の表情を浮かべ、恒夫さんを追悼した。
岡山県から参加のOHさん(81)は、団体参拝での本山3ヵ寺の参拝をきっかけに4ヵ寺目から1人で全国をまわりはじめた。「コロナ禍もあり参拝できない時期もありましたが、平成29年から今年の9月までの6年をかけて満願しました。不思議なご縁でたくさんの人に助けて頂き、1ヵ寺1ヵ寺に思い出ができました。本当にありがたいです」と話した。
「全国五十七箇本山御朱印めぐり」は各本山貫首染筆のご首題を携行し、参拝時にご朱印をいただく企画で、57本山参拝後には、満願証が授与されるほか、定数以上の参加者がいれば身延山久遠寺で満了証授与式が開催される。同セットは、日蓮宗新聞社で好評頒布中。問い合わせ・購入は日蓮宗新聞社営業部(☎03・3755・5271)まで。
中山法華経寺に加行所開設
千葉県市川市大本山中山法華経寺に日蓮宗加行所が11月1日に開設された。加行所は秘法である修法を相伝する日蓮宗の機関。入行会では2月10日までの100日間、読経と水行三昧の厳しい修行に自ら身を投じる僧侶54人が力強く大音声の読経を響かせた。
田中恵紳宗務総長は挨拶で、法華経寺に加行所が置かれてちょうど50年という節目に触れ、「人口減少社会に合わせるように、最も入行僧が少ない年になった。今後も減少は続くと思われるが、今までにない少人数のため、未来の加行所をうらなうことにもなる。宗門中が注目する100日だと肝に銘じて欲しい」と激励した。
加行所伝主の新井日湛貫首は2月10日の成満の日に再び会うことを期待した。伝師の若松宏泉師は入行僧に向けて「大変苦しい修行だが、耐え抜いて自身の手で神通力を得て、秘法でたくさんの人びとを救ってほしい」と訓示した。
最後に、全堂代表の廣橋是晃師が「不惜身命の決意をもって本日から寒壱百日間の苦修錬行に精進する」と宣誓した。
今年度も新型コロナウイルス感染症対策のため、境内での見送りはなかったが、法要への参列は可能になり、多くの寺族や檀信徒が祖師堂外陣から無事の成満を祈った。茨城県から10人ほどで見送りに来た野呂幸史さん(75)は「私たちのために厳しい修行をしていただいて、本当にありがたい」と話し、一緒に参列していた檀信徒も「住職が不在の間、一生懸命にお寺を守っていきます」と力強く語った。