日蓮宗新聞

2024年11月1日号

スリランカにお題目の華咲く

スリランカ・コロンボ日蓮仏教会佛心寺の開堂供養が9月29日、田中恵紳宗務総長を導師に営まれた。同寺の由緒は、2013年にゲムヌ・ラナスーラ理事長が、東南アジアの開教師(現国際布教師)として活動していた野田寛行師とエルフィナ妙布師(現インドネシア・ジャカルタ蓮華寺主任)に連絡をしたことから始まる。両師による巡回布教やゲムヌ理事長の自宅に設えられた小さな仏間での熱心な信行、また地域での慈善活動を通じて、温められてきた信仰が11年後に華開いた。エルフィナ師が担当する国際布教拠点の開堂供養は昨年のジャカルタ蓮華寺に続く。
スリランカは古来上座部仏教だが、法華経も伝来するなど大乗仏教が盛んな時期もあり、今でも上座部の寺院に菩薩が祀られていることがある。人びとの心には大乗の精神が根付いていることもあり、善行を施し功徳を積むことも意識されている。佛心寺のメンバーは地区に住む貧しい人たちへの食糧を届ける活動を行ってきた。2022年に起きた財政破綻のための対外債務不履行による急激なインフレで国民が食べ物にも困窮しているときには、東南アジアの日蓮宗諸寺院が協力して地域の貧困家庭に食料を提供した。
堂宇建立はメンバーの募金のほか、東南アジアの理事長が集まる会議で、スリランカの堂宇建立を助けようとある程度の資金が渡されたことも大きい。東南アジア・南西アジアの各寺院などは国境・民族を超えてワンチームのようであり、今回の法要にもマレーシア・インドネシア・シンガポールからメンバーが駆け付け慶事が祝われた。
法要に先立ち、近隣の上座部仏教のウィーディヤゴダ寺の本堂で田中総長導師に自我偈とお題目が唱えられた後、スリランカの民族舞踊の先導で佛心寺までの練り歩きが僧侶とメンバーらによって行われた。
法要は堂内外に約150人が参列するなか、スリランカの伝統行事のオイルランプ点灯式で幕を開けた。田中総長はじめ東南アジアの各寺院の代表者が幸せな門出や素晴らしい未来を願いながら、ランプに火を灯した。続いてエルフィナ師の発音でパーリ語での節がついた「三帰依文」の奉唱、方便品や自我偈、お題目に渡り、僧侶とメンバー全員の読経・唱題が新しい堂内にこだました。メンバーの子どもたちによる献供を見届けた田中総長はご宝前で「エルフィナ師の蒔きたる仏の種はこの獅子国で芽をいだし、信徒らが唱えるお題目の慈雨により道念堅固の華を咲かせたり」と述べるとともに、〝日本の仏法の月氏へかえるべき瑞相〟と日蓮聖人のお言葉を体する浄行に謝意を表した。また法要後の挨拶では、東南アジアの各国を文字通り東奔西走し、教えを説くだけではなく病気の人や貧困家庭への慈善事業に邁進するエルフィナ師を称えた。
祝辞として上座部仏教僧侶のウィーディヤゴダ・ヴィジィタロタ・テ師が「他者の苦しみを見て彼らを助ける利他行のグループに祝福を」と地区での活躍を期待した。また謝辞に立ったゲムヌ理事長は「私たちがしていることはこの地域の人たちのサポートです。この物語は11年前に始まり、さまざまな人たちの助言により豊かな旅になりました。本当に感謝しています」と話すと大きな拍手が沸き起こった。最後にエルフィナ師が「法華経は、私たちは1人ひとり違うが、それぞれに役割があり支え合っているという教えです。スリランカの人たちに幸せが広がるようにみんなで頑張っていきます」と挨拶した。

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新年のご挨拶。

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