日蓮宗新聞
2023年3月10日号
春のお彼岸
もうすぐ春のお彼岸です。3月21日(火・祝)が「春分の日」となり、この日がお彼岸の中日となります。入りは3月18日(土)、明けが24日(金)となります。1年に春と秋のお彼岸中日のたった2日間だけ、昼と夜の長さがほぼ等しくなる日です。仏教の「中道」(偏らない、調和のとれた)の思想と結びつき、此岸(この世)と彼岸(悟りの世界)の距離が一番近く、煩悩を離れて悟りの境地に至りやすい日とされます。この期間はご先祖への感謝とともに、いつもより意識して「六波羅蜜」(布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧)の修行をする期間とされています。
日蓮聖人は、仏さまの最上の教えは『法華経』と説かれ、「釈尊の因行果徳の二法は妙法蓮華経の五字に具足す。我等此五字を受持すれば自然に彼の因果の功徳を譲り与え給う」(『観心本尊抄』)と示され、法華経を持つことで仏の境地に達すると示されました。お題目は妙薬です。ただ妙薬になるかは、私たちの日々の行いによって大きく変わるでしょう。
その行いの1つが六波羅蜜です。見返りを求めず困っている人に手をさしのべ(布施)、ルールを守り人に迷惑をかけず(持戒)、世知辛い世の中に我慢する心をもち(忍辱)、どんなときも落ち着いた態度で(禅定)、得た知識を世の中に役立てる(智慧)ことで、仏さまの境地に近づくことができるのです。修行は日々の生活のなかででき、六波羅蜜はこの上ない喜びをも与えてくれるのです。
日に日に春を実感する頃になってきました。暖かい春の日差しを浴びると寒さで縮こまっていた体も心もほぐれます。周囲に対して、まずは優しい気持ちをもちましょう。未来への時計は1秒1秒先に進みます。仏さまに近づく歩を止めず、日々精進していくことが、この世を安穏にする近道です。

2023年3月1日号
115人が無事に成満
千葉県市川市大本山中山法華経寺に開設されていた日蓮宗の秘法・修法を伝授する寒壱百日間の読経水行三昧の結界修行場・加行所が2月10日に修了し、成満会が営まれた。午前6時頃、松宏泉伝師や初行から参籠までの僧侶115人が開いた結界を隔てる瑞門をくぐると、待ちわびた檀信徒が目当ての僧侶の名前を呼ぶとともに「お疲れさま!」とねぎらいの言葉をかけた。
法要では僧侶全員が無事の成満への報恩のために法華経信仰者守護の子母神へ読経を捧げた。修行僧は加行所伝主の新井日湛同寺貫首から修行を果たした証である許証を受けるとともに、初行の僧侶67人に田中恵紳宗務総長から修法師辞令が交付された。挨拶に立った田中総長は僧侶の眼に達成感と充実感が満ち溢れていると讃え、「まさに日蓮聖人から法華経弘通の命を託された先達です。立正安国・四海帰妙の祖願達成に向け活躍することを期待します」と激励した。松伝師は「感謝してもしきれない尊い檀信徒の皆さまに囲まれながら成満会を迎えられたことをうれしく思います。みんなで成満するんだという修行僧の異体同心の姿にお礼を述べるとともに、これから多くの悩み苦しむ人びとを救っていただき、そして尊い教えの法華経を届け、ありがたいお題目を唱えてもらうように活躍する姿を楽しみにしています」と訓辞した。最後に全堂代表を務めた阿部龍翔師は「仏力、法力、経力、信力、念力をもって広宣流布に邁進していきます」と謝辞で誓った。
式後、加行所から晴れ晴れとした顔を湛えて出てきた初行の一戸将弘師は「入行当初は修行を受動的に感じましたが、日を重ねるごとに〝させていただいている〟と思い始め、最後の日まで1日1日が惜しくなりました。〝辛い〟という経験を胸に、僧侶として、修法師として人びとに寄り添っていきたいと思います」と話した。また初行の谷本亮皓師を迎えに来た長崎県長光寺檀信徒の村端紀代子さん(83)は「瑞門から出てきた姿に言葉にならず、頭が下がりました。ご苦労さま、ありがとうと伝えたい」と喜んだ。

千葉県 誕生寺第802回降誕会
春の房総に寿ぐお題目響く
千葉県鴨川市大本山誕生寺で第802回日蓮聖人御降誕会が2月16日に営まれた。法要前には日蓮聖人のご両親が祀られる同市妙蓮寺(宗門史跡)からご幼像の渡御が行われ、全国的な寒波のなか、房総の暖かな日差しと迫力がある万灯供養が聖人生まれ故郷の小湊の春を賑やかした。
今回の行列には神奈川県茅ヶ崎市上國寺が初参加。同市の浜降祭で行われる神輿渡御を日蓮宗の万灯神輿として奉納披露した。この神輿渡御は茅ヶ崎に伝わり、「どっこい、どっこい」と相州神輿独特の掛け声や日本の伝統的な歌謡の形式の甚句とともに、神輿を上下に揺らすことで取り付けられた鈴を鳴らしたり、側面にある鐶(もしくは〝箪笥〟)を叩きリズムを取るのが特徴。製作したのは茅ヶ崎で神輿造りの工房を構える上國寺世話人の中里康則さんで、当日も甚句を威勢よく歌い神輿を導いた。参加した久米祐次さん(48)は「仏さまの力で団結できたことがありがたい。池上本門寺のお会式でも奉納したい」と抱負を語った。また祖師堂前では勝浦市の有志寺院からなる「ありが鯛万灯講」と共演し、一層降誕会を盛り上げていた。
法要は誕生を寿ぐ雅楽が鳴り響くなか、角濵監鏡執事長を導師に営まれた。慶讃文で角濵執事長が日蓮聖人の降誕の意義を読み上げた後、参列者は唱えるお題目で法華経受持を表した。参列した宗務院の山田光映財務部長が祝辞に立ち、「不惜身命のご生涯の始まりはここ小湊。この法要は私たちが今の時代において日蓮聖人の末弟としての自覚を強いものにし、次世代に教えを伝えていく新たな誓いとするもの」と伝えた。
