日蓮宗新聞
2019年5月10日号
菅野管長猊下で初の立教開宗会(第767回)
建長5年(1253)4月28日。世の中のどのような人たちもが安穏に暮らすことができる世界を目指された日蓮聖人は、現千葉県鴨川市大本山清澄寺の旭が森山頂で昇る太陽にお題目を唱えられ、妙法蓮華経を弘めることを誓われた。日蓮宗では同日を立教開宗の聖日としている。この聖日の前日にあたる27日、昨年、第54代日蓮宗管長に就任されたと同時に、清澄寺の住職となられた菅野日彰猊下を大導師に迎えた初めての立教開宗会(第767回)が営まれた。
和讃会有志約30人が奉唱した和讃「日蓮聖人奉讃歌題目」が祖師堂に響き渡った後、法華経を全員で読誦。慶讃文では菅野猊下が立正安国・世界平和に向けて僧侶檀信徒異体同心で尽くすことを誓われた。また挨拶では、「私たちは恵まれた社会に甘んじ、ありがたさを忘れてしまうことがあります。世界に目を転じれば、過去に日本でも味わった貧しさや争いが今尚、起こっています。全ての人たちが幸せになるために、民衆とともに法華経を読まれた日蓮聖人のみ心を今一度呼び起こしていただき、今こそ、末法万年の教えを弘めるときです」とご親教された。
翌28日早朝には、旭が森での旭日暁天法要が松永慈弘総務局長導師に営まれた。清澄寺では令和4年に旭が森の日蓮聖人銅像建立から100年を迎える。
2019年5月1日号
熊本地震から3年 物故者慰霊と復興祈願祭
熊本地震から3年が経った4月14日、南阿蘇村の長陽西部小学校跡地で物故者慰霊と復興祈願祭が、九州各地からの修法師らが出仕するなか営まれた。同地震では関連死を含め270人の犠牲者を出し、未だ約1万6500人が仮住まいを余儀なくされている。導師を務めた濵田義正熊本県宗務所長は挨拶で、法要中に犠牲者の思いを強く感じたことを述べ参列者に謝意を表し、法要を続けていくことを誓った。
熊本県管内で大きく被害を受けた寺院の1つ、益城町日眞寺は、本堂庫裡に隣接する崩れた県道の擁壁工事がようやく開始するという。一方で、全壊した同町道安寺や熊本市本妙寺の登録有形文化財の仁王門の再建、修復の目処は立っていない。いずれも行政による区画整理の計画が定まっていないことや財源不足によるものだ。道安寺の竹本義隆住職はみなし仮設として市内に居を構え、益城町の寺まで毎日通っている。「檀信徒の住まいの場所はバラバラになったが、お寺の行事があることで、みんなが顔を合わせる機会にもなっている。皮肉なことだが、家族の身体健全を祈りにくるなど、親子などの絆は強くなっている。仮本堂ではなく、早く寺院を復興させて、みんなが落ち着ける場所を作りたい」と竹本住職は願う。しかし、今後、区画整理での仮本堂の移動や再建時の寄付者に対する税制の優遇期限が迫るなどやらなければいけないことは多い。
法要に参列した阿蘇市光徳寺檀徒の女性は「家は半壊で済んだが、震災の影響で夫が体調を崩し入院し、1人で生活している」と現況を話した。また竹本住職は「東日本大震災もそうだが、まだまだ長い道のりで苦労している人がたくさんいることを忘れないでいて欲しい」と静かに語る。
濵田所長は「高齢者の孤独死など問題は山積み。だけれど、法要を営んだことなど、喜んでくれることを伝えていきたい」と述べた。